謎の男と謎の研究

この世には「事実」と「真実」がある。

「事実」と「真実」の違い 事実は、本当にあった事柄、現実に存在する事柄。 真実は、嘘偽りのないこと、本当のことを意味する。 意味は似ているが、事実はひとつで、真実は複数あると言われるように、事実と真実は異なり、一致しないことの方が多いくらいである。

分かりやすいのが冤罪だ。事実では犯人ではないが、証拠や操作の結果その人に有罪の判決が下るとそれが真実となる。

そのたくさんある真実から事実を追い求めるのが探偵や司法だと言うのであれば、真実を追い求めるのはマスコミだ。事実かどうかは関係ない。もっともそうだという証拠を見せつけることでそこで真実は作り上げられる。


5月も半ば、ゴールデンウィークを過ぎ学校にもなれ中だるみしやすい時だ。その反面、大学生の俺たちにとっては小試験やレポートなんかが増えてくる気が抜けない時期でもある。

タツに秘密を話し、あの後3人で何も考えないことにしようということになった。何よりアカリが自分でこのことを知らないわけが無い。それなのに話さないのはなにか訳があるはずだと気にしないことにした。

それにしても暑い。最近は4月は寒く、5月はもう暑い。今日は二限からのため焦ってはいないが、朝ごはんを食べていないため早めに家を出た。占いは8位、微妙。

家から出ると、朝は何を食べようか学校に行くまでの道のりも考慮し自分の食べたいものとバランスを取り、計算していた。

「すいません。ちょっといいかな。」

30手前くらいのスーツの男の人だ。渡された名刺によると記者の五十嵐さんというそうだ。記者ってスーツなんだっていうのが第一印象。

「今日は他の仕事もあってね。それよりも君たちがこの間、喫茶店でしていた話を聞きたいんだ。」

アカリのことだとすぐ分かった。なんでこの人が?どこまで知ってる?何を聞きたいんだ?

「僕達は心霊というかSFというかそういうものを取り扱ってるんだけど、写真に映らない子がいるんだろ?」

「いや知らないです。そんな怖い人。」

「しらばっくれないでよ。僕はその話を聞いてその子は透明人間じゃないかと予想してるんだ。」

透明人間!?どこで盗み聞いたか知らないけど、アカリは俺達には見えてるし、それにこの人ちょっと変だ。

「すいません。僕ちょっと急いでるので」

「朝ごはん奢るけど?」


朝9時半近くだが意外とこの時間のファーストフード店は人がいる。みんな大学生かな?スーツの人もいるし就活か?俺も来年こうなるのか。パソコンを開いてる私服の人はあれが仕事なのだろうか。あーゆー働き方してみたいなー。

「永瀬くん?聞いてる?」

「聞いてますよもちろん」

この店に着いてから取材というよりかは向こうの話を永遠と聞かされている。透明人間の話がよく出ているだの、映る映らないをコントロール出来るだの。にわかには信じ難いが参考にはなるため耳に入れている。シェイクも吸いやすくなってきて一気に啜る。もうすぐ二限の時間だ。

「じゃあ僕授業なので。」

「そうか。時間とらせてごめんね。また何かあったら連絡して。」

多分しねーよとちょっと心で思っただけだったが、顔に出てしまっていたのだろう。

「まあ無理にとは言わないけど」

「あ、いやもちろん連絡しますよ」

「まあするだろうね。僕はその現象がおきえるかもしれないことを知ってる。正確にはそれを研究している人に取材している。」

「え?」

「じゃあまた。」


「もしもし?何か欲しいものあるか?」

「ん?そりゃ金だな」

と即答したのはタツだ。この間のお礼として今日の二限の代弁してやる約束だった。(良い子は真似しないでね)

「今日さ。欠席でいいよな?」

「は?ダメだろ!今日課題出るから今日欠席だと点減るんだって!お前任せろって言ったじゃねーか!今どこで何してんだよ!」

「え?尾行?」

「はぁあ?」

「じゃな」

勝手に電話を切って尾行を続ける。

さて五十嵐は。あれ?え?

見失った。


学校に着いたのは2限終わり直前。早めに学食に行き定食を取る。自分の分ではない。おそらく今からお怒りされて来られる方用だ。なんて言ってたら外から俺を見つけるなりもうダッシュで走ってくる。すかさず口を出す。

「タツ様。この度はお勤めご苦労様です。このカツ煮定食をどうぞ召し上がってください。」

「まあよいだろう。これで出席しなかった分は許してやろう。しかしタクよ。貴様もこれが欲しいのではないか?」

出されたのは今日出た例の課題だ。

「これが欲しければ、今日あったことを話すのだ。」

「分かった。後で2人になった時に話す。」

ちょうどほかの友達も来て、俺の分も食事を取ろうと並んだ。携帯を開くとサチからメールが届いていた。あれからずっとアカリを見かけたら写真を撮って送ってくれる。何か分かるかもしれないからと。ただ、今日の写真を見て俺は慌ててサチに連絡した。

「それどこだ。今すぐか?」

「え?そうだけど。場所は」

サチはバイトの買い出しついでらしく、その場には居られないらしい。急いでその場所近くにかけ出すと、スーツではないが高身長猫背、特徴のある歩き方から見つけ出した。写真に写っていたのは五十嵐だ。今日は見逃さなかった。近づけてはいないが、目で見える範囲のカフェに入ったのが分かった。とりあえず中に入ってまた尾行してやろうと思ったが。

「あれ?えーっと名前なんだったかな?何か教えてくれる気になりましたか?」

お店が混んでて五十嵐は名前を書いて並んでいた。想定外のバレ方に唖然とし口がふさがらなかった。

「永瀬です。」

とりあえず名前だけは名乗っておいた。

「そーだ。永瀬くんだ。ちょうどよかった。今から人と会う予定なんですけど、永瀬さんと会わせたいと思ってたんですよ。」



コーヒーってなんか大人な感じがする。ブラックなら尚更。すこし大人ぶって微糖がいいのにブラックコーヒーを頼んだ。目の前2つのオレンジジュース。オレンジジュースを飲む大人だっているだろうが、なんかバカにされてる気がする。

「永瀬くん。紹介します。佐藤くんです。僕の古い友人である研究をしてる研究員です。」

五十嵐さんは丁寧な言葉遣いでバカにしている感じは全くない。ただこの佐藤という男。ボサボサの髪に髭面、深く被ったハットと。それに研究者だ。某しがない駄菓子屋を彷彿させる。

「どーもっす。佐藤と言います。以後お見知り置きを。にしても永瀬さん透明人間って凄いですね。僕も詳しくお話聞かせて欲しいっす。」

喋り方が一番腹立つ。

「あのですね。透明人間じゃないんです。俺は彼女に触れられるし見えてるし。」

「では何に映らないんすか?」

しまった。急にポロッと出てしまった。

「永瀬さん。タイムマシーンって信じますか

?」

「タイムマシン?そりゃあれば嬉しいけど」

タイムマシン。要は時間軸を操り自分の好きな時間へと移動する装置。中学の理科の先生が言っていた、タイムマシンは作れると。仮に人が光を超える速さで移動すると次元を超え未来に行くことは可能。でも過去に行くことは絶対に出来ないとか。未来も行けて数秒みたいな事も言ってたな。

「あたしは過去に行く研究をしてるんですけど。なかなか上手くいかない。要は未来に行っても帰れない。」

あ、理科の先生あってたんだ。

「今やっぱりって顔しましたね。未来ってどれくらいまで未来に行けると思います?」

「数秒とかって昔聞いたけど。」

「今の技術だと1000年先まで行けます。」

「は?え?でも戻れないと意味ねーし。ってかさっきから俺の話と全然関係ないじゃんか」

「質問を変えます。星は見た事ありますよね。今日見る星は何年前の光でしょうか?」

「まん?億年くらい前だろ。知らねーよ。」

「そうもしかしたらもう消えてるかもしれない星の光が目に見えてるんすよ。」

こいつが何を言いたいのかわかった。でも理解は同時には追いついてくれなかった。

「あなたの彼女さんは過去から未来に飛んできた。その際の副作用か写真にのみ彼女の光は捉えられない。」

いきなりそんな超人的な事を言われても、凡人の俺にはにわかには追いつけない領域だ。

「それを確認しに五十嵐さんは彼女にあってたのかよ。」

「え?僕ですか?あなたの彼女さんには会ってないのですが。今日は1人でランチしてたので。」

五十嵐さんは丁寧で嘘がないそんな話し方だし、そんな人柄にも感じる。

五十嵐さんの写真を送ってきたのは、サチ。


誰がなんのために嘘をついているのか。

アカリは過去の人物なのか。

この物語を進めるのは信頼か理解か。


to be continued

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