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僕たちが見学コースの三番目、最後に向かったのは兵士たちの食堂。
シーケント要害に中庭みたいな場所があって、その一角に食堂は建てられていた、
日当たり良好、窓も広く防壁があるにも拘らず風通しも良い。何より清潔感で溢れている。アパートとなれば即座に借り手が付くくらいだろう。
商業施設としてもいいかもしれない。
まぁ、こんな場所にあるのだから、貸し出しなどされる筈も無いのだが。
僕たちが食堂に訪れたのは丁度お昼頃。要害を守る兵士たちが代わる代わるに顔を出す、そんな時間の時であった。
「これも見学会の一部だからな。楽しんでくれたまえ」
見学会一行の目の前には何処にでもあるような料理が並んでいる。
パンとスープ、そしてソーセージの盛り合わせに根菜類を含んだサラダだ。
パクリと一口食べてみて思うのは……。
「味は悪くない。むしろ良い方?」
そう。口に運んだ料理は街の食堂で売り出してもそこそこに売り上げに貢献できるであろう味付けだ。僕としてはこっちの方が好みではあるな。
「見学者には兵士達と同じ食事を摂ってもらっている。口に合っただろうか?」
説明をしてくれる兵士は、そんな事を口にしている。僕たちの手が休まることなく動き続けている様子を見て表情が緩んでいるようだ。そこそこ嬉しそうであるな。
「兵士たちが口にする料理は大抵が拙いと相場が決まっている。わが国ではそんな現状を打開したいと思い、こうやって末端の兵士たちの食事を良くしているのだ」
確かに、料理は特筆すべきものがある。
不味いものを食べ続けていればやがて慣れてしまうだろう。
だが、不味いと思いながら食事をしているよりも、美味しいと思いながら食事をする方がよっぽど士気も上がるだろう。
フィナレア公国は兵士たちの職場環境を大きく変え、そして、成功したようだ。
「そうですね、兵士たちの顔が喜びに溢れているのがよくわかります」
誰かがそのように返答した。
周りを見渡せば、ワイワイとにぎやかな食事風景が目に入ってくる。
これが不味い食事であれば、ワイワイの内容がギスギスした文句ばかりになりかねないだろう。
「この味付けなら満足いくだろう」
「そうね、でも……」
隣に座るフラウに料理を口に運びながら感想を漏らした。
それに対してフラウは何か言いたいらしい。
一瞬口ごもって……。
「量以外は……ね」
うん、フラウが言いたいことはよくわかる。
僕たちの目の前の量は街中の食堂で出てくる一般的な量だ。
多すぎもせず、少なすぎもせず、丁度良いだろう。
だが、離れた席に座る兵士たちに割当てられた量はと言えば……。
「あれで一人分か……。訓練すると相当に腹が減るのだろう」
量が多すぎるのだ。
たぶん、僕たちの三から五倍も食べてる。
しかも、誰もがぺろりと平らげるのだから恐れ入った。
「自分は管理官として赴任しているのでそこまで量は食べないが、訓練をする兵士達は食べるのも訓練の一つだからな。新兵にはキツイのもあるだろうが」
そんなところだろう。
ま、この味なら食べられるようになったら満足出来るだろう。
そんな事を思いつつ、割当てられた一般的な量の料理を残さず平らげると、しばしの休憩を挟み要害の見学会は終わりを告げる事となる。
「では、食事も終わったので解散地点まで案内する」
食事を摂った食堂も本来なら一般人立ち入り禁止だ。
そこをあえて見学コースに入れてくれたのだ。有難い事である。
そして、兵士に連れられ別の場所を通りながら解散地点を目指すのだが……。
「あれ?あそこ崩れているぞ」
解散地点へ向かう途中、要害の中を進んでいると天井が崩れている場所を通りがかった。
安全対策の為、入れないように格子で遮られていたが。
その場所は人が肩車をすれば届いてしまうくらいに天上が低かった。
それよりも気になるのは崩れた天井の更に上に天井が見える事だろう。
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