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「まぁ、そんなところだろうね」
天井高さが中途半端であることに疑問を残しつつも僕たちの要害見学は進んでゆく。
次に向かったのは要害を要害たらしめんとしている防壁の屋上部分、歩廊と言えばいいのだろうか?その場所である。
広い廊下とは裏腹に狭い階段を登って屋上へと出ると僕たちがよく目にする光景、四角い鋸状の狭間が向こうまで続いている、が写り込んできた。
それを見れば防御は十分であろうことはよくわかる。
そして、歩廊は兵士たちが悠々とすれ違う事が出来るほどの広さとなっている。
とは言え、広すぎても良くないし、狭すぎても良くない。ほどほどって所だろう。
「ん?この煉瓦は新しい?」
「そんな感じがするわね。つい最近敷かれた、いえ、直したって所かしら?」
歩廊を注意深く歩いていると、足元からの反発具合は新しい煉瓦を踏みつけているようだった。もしかしたら硬質煉瓦を踏みつけているだけかもしれないが、何となくそのように感じてしまったのだ。
「お、よくわかったな!」
フラウと感想を述べあっていると追いついてきた兵士が嬉しそうに答えを述べてきた。
って、そうなの?
結構当てずっぽうだったんだけどね。
「この歩廊の煉瓦は数年前に入れ替えたばかりだ。向こうと比較してみるといい。あのあたりから色合いもヘタリ具合も変わっているだろう」
兵士が示す場所へ視線を向けると、その通りの場所が見える。
こちら側は赤っぽい煉瓦に対し、向こう側は黒っぽく、そして何となく丸みを帯びているように見える、凹んだり出っ張ったりと。ショックを吸収するとはいえ人が何年も歩き回っているのだからヘタッて仕舞うのだろう。
「だけど、原因はヘタッたからじゃないぞ」
「そうなんですか?」
兵士曰く、シーケント要害を挟むようにそびえ立つ山脈から落石があったそうだ。
その落石が運悪く、シーケント要害の歩廊に直撃し、表層の煉瓦を砕いたのだとか。
「幸いにして死人が出ずに済んだが、一歩間違えば何人もの兵士が命を落としていただろうな」
防壁の屋上部分に人がいない、そんな時間はありえない。誰かしらが詰めている。平和になっているとは言え、遠くまで見通せるこの要害は非常に重要な施設である。隣国の動きを見る他に、山火事や崖崩れ、魔物の出没の早期発見等、様々な感じ業務を担っているのだから。
その監視業務にあたる兵士は少なくない。
歩廊には最低でも十数人が上がっている。
だから、ゴロゴロと降ってきた岩に直撃し死亡した兵士がいなかったのは奇跡と言うほかなかったのだ。
まぁ、骨折を伴う大怪我を負った兵士はいたようだが。
「ま、そんな事があって、煉瓦を取り替えたって訳だ」
「落石で要害が崩れなくてよかったですね」
「まったく、その通りだ。オレも良く表層だけで済んだと思うよ」
兵士は溜息交じりにそう答えた。
僕は落石があったであろうそびえ立つ山脈へと視線を上げた。登って来たであろう距離と同等の高さがあると思える簿殿山頂からの落石であれば要害も無事とは言い難いだろう。
それにしてもよく表層だけで済んだものだ。
僕はそれが不思議でならなかった。
「なんか、不思議な建物だなぁ、このシーケント要害ってのは」
不思議な建物の塊。
それが半分も見学していないシーケント要害の感想であった。
その理由も何となく理解してる。
「何と言うか、ちぐはぐな印象なんだよな~」
何となく。
そう、何となくなのだ。
しかし、何処がちぐはぐなのかと問われると答えに窮するのは間違いない。
あくまでもこのシーケント要害を眺めた印象である。他の要塞や王城などをまじまじと見たことが無いので比べようがないのは確かではあるが……。
ま、とにかく、そんな印象を浮かべつつ、見学は次のエリアへと向かうのである。
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