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「は、早い!」
僕が警戒を外に向けたと同時に魔物が目視で確認できる所まで来た。
まだ離れているけど、こっちに向かってくるのは確実だ。魔物の視線は僕たちをしっかりと獲物として捉えているんだろうね。
「遠くにいるから鑑定は出来ないけど、あれはゴブリンであってる?」
僕の鑑定スキルを発動させるにはまだ距離がある。
鑑定したと言っても魔物の詳細な情報は分からないが、どんな魔物なのかはわかるはずだ。
と言うが、あそこまでシルエットがハッキリしていれば何となくわかる。
予想は通りだとゴブリンだ。
「そうね。ゴブリンで合ってるわ。でも、通常種のゴブリンだけかは分からないわね~」
ゴブリンと言えども武器を振り回すしか脳が無い通常種なら問題無いが、魔法を使うゴブリンマジシャンや、変異種のゴブリンリーダーが群れに居ると途端に脅威度が上がるから安心はできない。
後はゴブリンが扱う武器だな。
近接武器だけなら多少は安心できるけど、弓などの遠距離武器を持っていると……。
あぁ、不安だらけだ。
ゴブリンを迎え撃つのは良いけど、ここは袋小路の終点だからなぁ。
崩れているから天井が無く空が見えているとは言え、壁を越えて逃げるのもすぐには出来そうに無い。
「結局、逃げる事も出来ず、向かってくるゴブリンを全力で撃退するしかないって事か……。でも、何でゴブリンは僕たちがいるとわかったんだ?」
「さぁ?」
まぁそう言うだろうな。
僕にだって分からないから、フラウが首を傾げるのは分からないでもない。
「恐らくだが昨夜のゴブリンだろう。あれを返り討ちにしたのが原因とみるが?」
二人して首を傾げていた所、正解に近い(であろう)答えを口にしたのはヴィリディスだった。
昨夜、僕が見つけて三人で打ち倒したあれが原因だと言う。あれは斥候か偵察隊だったが、戻ってこなかった為に威力偵察に出て来たのではないか、と。
同じ群れだったら、との条件が付くけどね。
「オレも予想だからな。それが正解だったからと言っても脅威が無くなる訳じゃない」
そう言いながらヴィリディスは杖を構える。
既にゴブリンはそこまで来ていたのだ。
間もなくゴブリンたちは建物の枠内に侵入してくるだろう。
入り口にあるあの二重の円、魔法陣を踏んだ時が戦闘開始となる。
僕たちはその意見を共有し、ゴブリンたちに備える。
「見えた!」
ギリギリの距離だけど、鑑定スキルが発動した。
ゴブリンが五匹。
昨夜と同じ数だけど……。
「マジシャンが混ざってる。それに上異種のリーダーが一匹……」
ヴィリディスの魔法が使えるから今回はある程度楽に撃退できると考えていたけど、マジシャンに加え、統率スキルを持ったリーダーが群れを率いているから楽なんかできない。下手したら僕たちが駆逐されてしまう、そんな未来も存在する。
「だけど、リーダーと言っても体格は他のゴブリンと変わらないな。強引に攻められても何とかなりそうではないか?」
「体格はヴィリディスのいう通りだな。そうなると、あれは統率に特化した個体って事になるな」
前に遺跡にいたゴブリン軍団を駆逐したときに指揮を取っていたリーダーはパワータイプであり、統率スキルを使うと共に自分も前に出て戦う武将タイプだった。
いま、目の前にいるのは後方から部下を手足の様に扱う参謀タイプと思っていいだろう。
「兵士三匹に魔法使い一匹。楽に倒そうせず、一匹一匹各個撃破するべきかもしれん」
「だね。とりあえず、後にいるマジシャンへの牽制は任せて貰えるかしら?」
作戦は僕とヴィリディスで兵士のゴブリン三匹を各個撃破。フラウは前にいる兵士ゴブリンへ援護できない様にするらしい。何か策があるのだろう。まぁ、矢を射るだけかもしれないけど。
「皆、死なないようにな……」
僕は業物の剣に魔力を流して、切っ先をゴブリンに向けるのであった。
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