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フラウと二人で遺跡の周囲を警戒する。
警戒なんだから当然、ちちくりあう、何てのは無いからな。
無いったらないんだ。
それはともかく、歩哨の様にしているとハッキリ言って暇である。
で、ちちくりあう……ってのはもういいよ。
話を進めよう。
僕らが周囲の警戒を始めて数時間、そろそろお昼の時間になろうかとしている。
ヴィリディスは集中しているようでお昼の時間になっても調査を止めようとしない。いったん休憩だ、と声を掛けなければ、あたりが暗くなるまで遺跡にへばりついているかもしれないな。
そう言えば、殺されたバシルとのやり取りが定期的に連絡を取り合うのが生存確認も兼ねていると話を聞いた時は正気か?と思ったのだが、今思うとアレは正解だったのだな。
今のヴィリディスは周りを気にしなさ過ぎて魔物が現れたら真っ先に餌になってしまうだろうね。
僕たちは遺跡の奥に陣取り、お昼の支度を始めた。
薪を多少拾ってきたとはいえ、そこまで潤沢にある筈も無く、最低限のスープとお茶を淹れられるくらいだな。
ちなみに遺跡の奥に陣取ったのは地面が露出して折らず、レンガが敷き詰められて火事が起こりにくいからだ。
ここまで破壊された遺跡なんだから、僕らがお昼を作るくらいの焚火をしてもいいだろう。
「ヴィリディス。いったん休憩にしてお昼にしよう」
朝よりも簡単なスープとパン。そして買っておいたチーズがメニューだ。
お茶も淹れたが、銘柄は朝と同じ。
まぁ、お茶だから飽きる事もないだろう。
「あぁ、済まない。もうこんな時間か……。ずっと腰を曲げていたから爺臭くなってしまったな」
僕が肩を叩き声を掛けて始めて、ヴィリディスは周りに目を向けた。
今の今まで集中していたのだと思うと、すごいの一言以外何の感想も出てこないよね。
そのヴィリディスだが、無理な姿勢が祟ったのかゆっくりと立ち上がりググっと腰を伸ばして気持ちよさそうな表情を見せている。
凝り固まった身体を伸ばすのは気持ちいい。
僕もアレをやると、たぶん同じ表情をしているだろうな……。
たぶん。
ヴィリディスが身体を伸ばし終えたところで昼食。
代り映えのしない昼食だが、文句を言わず食べる食べる。
味はそこまで悪くない。
特に買い込んだチーズが良いアクセントになっている。
僕も濃い塩気のあるチーズは良いと思う。
野営のある時は買い込んおこう。
「で、さぁ。あとどれくらいで終わるの?」
食後のお茶をずずずと吸い込んでいるとフラウが質問を口にした。
丸一日あれば調査が終わるだろうと思ったが、随分と手間取っているように見える。
何と言うか、もっときびきびと行えば、もっと早く終わるだろうと思うのだが……。
「そうだな……。今日いっぱいは掛かるだろうね。まだ、文様も写し終えてないし」
「文様?あぁ、この壁のだな」
魔法陣に鑑定具を向けて何かの値を調べている。
それが終われば僕たちが陣取っているこの周囲の壁にわずかに残っている文様を写す。壁はかなり崩れているので残っている文様は多くは無い。だから、時間はそこまで掛かるとは思えない。
まぁ、何も無かったらとの条件が付くのだが……。
「邪魔さえなければ……なんだが」
ヴィリディスがそんな不気味な言葉を口にしたと同時に杖を持ち立ち上がった。
何事かと思うが、僕もフラウも異変に気付きコップを無造作に床に置き武器を手に立ち上がる。
僕には不気味な気配が流れてくるのを感じるだけだが、二人はその他にも何かを感じているようだった。
「これは魔物ね。ゴブリンかしらね?」
周囲に視線を回しながら異変の元となりうる魔物を予想する。
フラウの感性が正しいかどうかは暫く待つ必要があるが、脅威が近づいている事だけは確かだ。
「さて、何が現れるか……」
僕は普段使いの剣をいったん収め、業物の剣を抜き、周囲を一層警戒する。
そして、魔物の気配へと視線を集中させるのであった。
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