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「ここからが大事な話です。先程の光属性魔法、闇属性魔法もそうですが軽々しく口にしない方が良いでしょう」
「そうなのか?いや、そうだな。ヴィリディスが言うのならそうなのだろう」
興奮冷めやらぬクリガーマン教授を落ち着かせるべく、口を酸っぱくしてまで釘を刺す。そのおかげか教授はトーンを下げた言葉遣いで返してきた。
これなら問題ないだろう。
もし、教授から教会に様々な事柄が漏れたら、僕たちにも追っ手が掛かることになるからね。石橋を叩いて叩いて叩きまくって安全を確保する必要があるのは仕方ない。
「なぜ、教会が関連しているかお話します」
「よろしく頼むよ」
多少、納得していない様子だったがあのままでは話が進まないと考えたのか、渋々とヴィリディスの話を聞き始めた。
ヴィリディスの話は僕たちにが既に知っている話。
とは言え、そう何度も聞く事などできないので、これが都合三回目となる。
一度目はサラゴナの街への道中での事。
二度目はトロールを駆除した遺跡からの帰りの道中でのことだ。
特に二度目で教会の危険性を改めて知り得たのは大きかった。
さて、話を戻して教授には次の事を話した。
まず、教会が”光属性魔法”を使っているであろうこと。
”白き光”とあるように”光属性魔法”を使用すると真っ白な光を見る事が出来る。
誰もが一度は受ける”祝福の儀”が最たる例だ。
外から見ていてもわかる通り、司教が子供の頭に手を置き、文言を唱えると身体が光り輝く。それこそ”光属性魔法”を使ったときと同じである。
「なるほど……。教会で行われる”祝福の儀”が”光属性魔法”だと言うのだな?」
「そう考えます。そして、腕を欠損などして教会の奇跡によって腕が生えてくる、こんなのも”光属性魔法”であると考えます」
更に教会が奇跡と呼ぶ怪我や病気の治癒もその一種であると話す。
これも同じように患部が白く輝く。
ただ、ヴィリディスたちは奇跡と言う行為をその目で見たことは無く伝聞だけであると一応伝える。
「確かに、あの奇跡と言うのも同じだな。現場を見たことがあるが、”祝福の儀”と同じ様に光るのはそう言う理由だったのか……」
先程から憮然とした表情を見せていたクリガーマン教授だったが、”祝福の儀”や奇跡と称する治癒行為を事例に上げて見せたところ納得の表情に変わった。
表情が変わったと言う事は教授の中で納得した事があるのだろう。
とは言っても僕にはわからないけど。ヴィリディスだったらわかるのかな?
「納得した様子を見ると……。教授は奇跡を見たことがあると?」
「ああ、見たことがあるぞ。王都の教会でな。金持ちが多いから結構な頻度で見る事が出来るぞ。お前達も王都に行ったらぶらっと教会を訪れてみるといい」
僕たちが拠点にしていたウェールの街やその南のレスタートンの街は辺境に近く金持ちは少ない。父親が仕えていた辺境伯でさえも兵士を多数揃えていて裕福とは程遠い。
兵士たちが魔物討伐で腕を欠損したとしても、教会の軌跡にすがれるような予算は持ち合わせていなかった。僕の実家も貧乏だったし、質実剛健が服を着て歩いている、そんな人ばっかりだったからね。
それに合わせて教会にも腕の立つ司教が来ていなかったと記憶している。
お布施を受け取るだけの建物だった様な気がするんだよな。
これはレスタートンの街でも同じだった。
唯一異なるのは辺境伯領とレスタートンの間に位置するウェールの街。
各街の中間地点となる場所だったので、例外的に高位の司教が周辺地域の中核を担っていた。
それに比べ王都であれば、高位臣下の貴族や儲けに儲けているがめつい商人も多数いるはずで何かの病気や怪我をすれば大金を積んで奇跡にすがっているのは容易に想像できる。
辺境と中央都市の格差がこれほどあるのかと、始めて考えた瞬間だった。
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