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興味津々で身を乗り出していたクリガーマン教授はふぅ、と息を吐き出した。
身を引いて姿勢を正すと腕を組み、天を仰ぎ瞼を閉じた。
恐らくだが教会を敵に回さざるを得ない状況になってしまう可能性が高い事を深慮しているのだろう。教授の助手たちが教会から派遣されている事も懸念事項となっているのもあるだろうね。
僕の父親からの説明では教会はとてつもない権力を持っていると聞いた。
口で脅すだけでなく、力に訴える事もある。
教会の守護者である教会騎士団が街の至る所に見え、それらに襲われる可能性だってあるだろう。
それだけじゃない。もしかしたら教会から派遣されている助手に寝首を掛かれるかもしれない。毒殺の危険性もある。
それを考えればヴィリディスが告げた危険性を正しく理解する必要がある。
僕だって、教会から……だけじゃなくても、四六時中命を狙われるのは御免被りたい。今のところ秘密を握っていると知らないだろうからその心配は無い。だけど、何時バレてしまうのか、戦々恐々であるとは言える。
「仕方ない。口は固い方だ、聞かせてもらおうか……」
暫く星が瞬く天を仰いで深慮にふけっていたクリガーマン教授だったが、危険を伴う事に覚悟を決めヴィリディスの話を聞くことにした。
王立高等教育学院の教授と言う世間的には地位のある彼にそこまでの決断をさせるのは容易ではなかったはず。教授の苦悩が言葉の端々に出ているのがわかる。そこまで決断させるのは何があるのか、僕にはわからないけど……。
好奇心なのか、知的欲求を埋める為なのか。
「いいですね、教授」
「くどいぞ。何度も言わせるな」
「では、早速」
教授に念を押して再度確認したあと、ヴィリディスは重い口を開きゆっくりと話し始めた。
「では、オレが教授に送った手紙は手元にありますか?」
「ん、手紙か?ちょっと待て……。何処へ行ったかな……」
たしか、このあたりに入っているはず、と荷物から鞄を引っ張り出してその中をガサゴソと探し始めた。ちらっと見たけど、書類とか、それを挟んだファイルとか、無造作に入れてあって探しにくそう。僕だったらもう少し見つけやすいようにタグみたいなのを付けるとかするけどなぁ。
「おお、あったあった。これだ」
ヴィリディスからの手紙を見つけたらしく封筒を手にしてそれを開く。
中から数枚の手紙を取り出して焚火の光にかざしていた。
僕から見えるのはその手紙に沢山の文字が追加で書き込まれているのがわかるだけ。文字は……達筆過ぎてわからない。
達筆って、わかるでしょ。
わからない?
まぁ、いいか。
「と言う事はこれだな」
そして、教授はヴィリディスから受け取った暗号のような文字を解読した文章をゆっくりと読み上げた。
”黒き闇が人々に苦難を与え、白き光が人々に希望を与える。
二つは背反するが補完する間でもある。
どちらを欠いても、どちらに力が傾いても、人々は不幸に襲われるだろう”
僕たちでは一行目と二行目の意味がわかったあの文章である。
「この”黒き闇”と”白き光”って訳したが、全く意味不明だった、これだな」
「そうです。それが恐らくですが、教会と関連しているのです」
「なるほどなるほど……」
納得したのか、してないのか、生返事を口にしながら頷く。
僕も完全にわかってる訳じゃないから、教授の気持ちがわからないでもない。
今でも説明をされても生返事になりそうだもん。
「答えを言いますと、”黒き闇”と”白き光”はオレたちが知らない魔法、闇属性魔法と光属性魔法であると考えます」
「なに?火水風土の四属性以外にも属性魔法があったと言うのか!」
「その通りです」
ヴィリディスが口にした言葉に教授は身を乗り出しながら驚き、思わず大声を上げてしまった。
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