-3-
僕たちは焚火を囲って車座になる。これから重要な事を教授に話さなくてはならない。テントで寝入っている御者が起きないか、気にしながらだ。ただ、御者が寝入ってるテントは少し離れた場所にあるので大きな声で話さない限りは大丈夫だろう。
念のために焚火のあるこことテントを張った間には布で仕切りを作ったので大丈夫と思いたい。
布で仕切りを作っただけでも話し声って聞こえ辛くなるのだから驚きだよね。
それ以外にも教授が念のためと取り出した防音の魔道具も使うんだから話が漏れる事は無いだろう。
この魔道具、効果を少なくすると外からの音が入るようになる優れモノなので僕としては一つ欲しい思うくらいの逸品だ。
「何処から話そうか……」
ヴィリディスは頭を掻きながら思案のしどころだと難しい顔をする。
「そこまで考えなくても良いんじゃないか?ヴィリディスが持っている本の事を話せば全て終わりじゃないか」
思案している所悪いが、考えすぎているディリディスにやんわりと言葉を掛けてみた。
ゴブリンを駆除した遺跡の事を話しても無意味だからね。
「そうだな……」
僕の言葉で何かを思ったのか、懐から一冊の本を出してきた。
って、いっつもそこに入れているの?鞄に入れておけばいいんじゃないか?
「それは何だ?」
ヴィリディスが取り出した本に興味津々な教授が不思議そうな顔をする。
僕だったら本よりも仕舞っている場所に興味があるけどね。
「バシルって男、知ってますよね?」
「あぁ、知っている……と言うよりも覚えているぞ。時折手紙のやり取りをするくらいだがな。お前さん程知った仲ではないが……。と言うよりもお前が紹介してくれたんだろうが」
「そうでしたね。覚えていてくれるなら話が早い」
ヴィリディスはウェールの街で殺されたバシルを知っているかと一応尋ねた。彼が引き合わせたのだから知らぬわけがない。ただ、合わないうちに頭の中から綺麗さっぱり忘れ去れていないかの確認だったが。
「これはそのバシルが所持していた本です。今、世間一般に出回っている印刷の本ではなく、写本なのです」
「写本?これは珍しい……。だが見たところ新しそうだが……!!」
焚火に照らされた本を凝視して、思った感想を口にする。
写本と言えば印刷技術が出来上がっていない時代の書物を意味するのが一般的だ。
そして、何か気付いたらしく、ハッと息を飲んだ。
「バシルは殺されましてね。これが原因かは不明ですけど……。教授が睨んだ通り、こいつは恐らく”禁書”の一部だと考えます」
「おいおい、”禁書”って初めて聞いたぞ」
「ヴィリディスは良く隠すわね。知ってたら教えてくれても良かったのに……」
”禁書”と聞き僕とフラウは驚いた。
写本であるとは聞いていたが、そこまでの危険物だと認識は無かったのだ。
内容は話せないから黙っていたけど、正直言って、その一言で戦慄が走ったのは確かだ。
そして、教授も”禁書”と言う前に書物の危険度に気付いたのだろう。ハッと息を飲んだのはその為だと思う。
「あの時はわからなかったが、その後読み解いてみてそう感じたんだ。断定できないし、うっかりと話も出来ないから黙ってた」
「まぁ、それなら仕方ないか」
「仕方ないけど、納得はしないわ。今はそれで言い争う暇はないから続けてくれる?」
ヴィリディスは謝罪の言葉を口にした後、罰が悪そうに僕たちに頭を下げていた。
これ以上、彼を追い込むのは話の腰をバキバキに折り過ぎるので口を紡ぐことにする。
「コーネリアスたちは知っての通り、この本には魔法について書かれている」
「なるほど、魔法の書って事か。で、何が書いてあるんだ?」
「そう、迫らないでくださいよ。その前に危険性を伝えねばならないのですから……」
僕たちが口を紡ぐ最大要因である事柄をヴィリディスは口にしようとする。
「よろしいですか?この本に書かれいる事は信憑性が高く、本当の事と思われます。そして、知り得た事をうっかりと話してしまうだけで教会から生涯、逃げねばならない可能性が高いです」
内容を口にする前に、本の内容を知った後はうっかりと口にするだけで危ない……かもしれない、と教授に説明するのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます