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僕は頭の過熱が収まり、物事を考えられるまで冷静さを取り戻したところでゆっくりとヴィリディスに問い掛けた。
「僕たちが(光属性と闇属性の)二種類の魔法を知っているのはこの際置いといて、何でまた教会から派遣されたのが教授の助手をしているんだ?」
今、僕の中で一番の疑問がこれだ。
遺跡の研究という、教会がバックアップしたいくらいの事を行っているのだから当然と言えば当然だ。
「だがな、オレたちがゴブリンに占拠された遺跡で見たのは何だったか、思い出してほしい。特に、遺跡の中で見た景色だ」
「あぁ、ゴブリンを殲滅したあの遺跡かぁ。そうだな……」
僕はあの時の様子を思い出そうとした。
確か……。
遺跡のゴブリンを領兵が駆逐してから残党狩りと称して遺跡の中へ入ったな。
ほとんど駆逐してたから僕たちの仕事はほとんど無かった。数匹は残っていたからそれは狩った。でもそれだけだったな、ゴブリンは。
それで内部はどうだったかと言うとゴブリンが陣地を構築しようとしてたかは不明だけど、地面を大きく掘り起こしていたな。あれば塹壕だったのか?
でも、それだけ。
ゴブリンが建物に興味を抱いていたら崩していたと思うけど、それは無く遺跡は手付かずだった。
えっと、手付かず?
確かに手付かずだったな。
あれ?手付かずでいいのか?
教会は遺跡調査を使命としているんだよな?
それで手付かずってのは何かおかしい。
調査していない?
って事か?
調査しないで現状維持に留めている。
理由はわからないけど、そうなんだろう。
そうすると、遺跡調査をしている教授に教会が助手を送る理由がない。
別に調査しないで現状維持でよかったんだろ?
それをふまえて考えると、教授が遺跡調査をすると都合が悪い。
助手たちは教授にそれとなく教会から派遣されたと耳打ちして大規模な遺跡調査を行わないようにする。
それが目的……。
その考えをぼそりとヴィリディスに告げると、”それで合ってる”と告げられる。
間違っていなかったことはホッとしたけど、教授はそれでよいのだろうか?
かなり不満が溜まっていると思うけど……。
「それ故に遺跡では地面を掘れない、資料を持って帰れない、必要以外の情報は書き写せないと苦労していたんだ。だから、今回のオレたちからの情報は渡りに船って事で、嬉々として遺跡調査に乗り出したんだ」
「それで、ある程度の答えは出たのか?教授なんだから、事前にあたりはついていたんだろう」
ヴィリディスが教授に送った手紙から調査する遺跡を何処にするかあたりをつけていた見たいだしな。答えを出していてもおかしいとは思わない。
僕はヴィリディスの口から答えが出ることを期待して顔を向けてじっと見つめる。僕の視線に耐えきれなくなったのか、顔をそらしてぼそりと言葉を吐き出した。
「一応解読はできた。だがな、何を意味するのは半分以上は不明だったよ」
そして、完全に一致ではないがと前置きしたうえで、解読した言葉をヴィリディスは続けて口から出した。
”黒き闇が人々に苦難を与え、白き光が人々に希望を与える。
二つは背反するが補完する間でもある。
どちらを欠いても、どちらに力が傾いても、人々は不幸に襲われるだろう”
黒き闇と白き光はそのまま闇属性魔法と光属性魔法を示していると思う。
それぞれの役割は闇属性魔法が苦難、つまりは足枷を掛けるのだろう。もしくはそれに類すること。
光属性魔法はその力を使って人々を癒す力になると見ていい。
そして、それぞれ補完する間というのは闇属性魔法で与えた苦難を光属性魔法で消し去る、と見ていいだろう。もしくはその逆も真なりだ。
そうすると、教会が使う光属性魔法、祝福の儀はいったい何を消し去っている?
疑問が疑問を呼ぶが、それ以上は僕の頭では思い浮かばず、”考えるだけ無駄”とそれ以上の思考を放棄するのだった。
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