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僕がテントから這い出た時には、日がすでに真上に上がっていた。
ポーションで治したとはいえ、無理をするべきではないと盛大に寝坊していたのが理由であるが。
気を失い、そして、何も口にする事も無く眠りに就いていたために盛大に腹が鳴って起きだしたのは内緒だ。
内緒って言ったら内緒なの。
身体の方は痛みはそれ程無く、激しい運動や戦闘にならなければ大丈夫だ。重量物を持つのも今日、明日は控えた方がいいだろう。
それから軽く昼食を食べ、ヴィリディスたちに合流した。
調査していたのはトロールの巣となっていた建物の外。渡り廊下の様に屋根が付いていた場所だ。
見たところ壁一面に奇妙な文様が刻まれていた。ゴブリンが占拠していた遺跡にあったような文様と似ていた。教授が食い入るように見ているのだから、実は同じであろうと予想が付くのだが……。
いや、ハッキリ言って、僕には価値がわからない。
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名称:遺跡の壁
価格:一般市民には無価値?
説明:所々崩れているが、年代物であるのは確か。残っているところが多い。
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この鑑定結果、ゴブリンが占拠した遺跡で見たものとほぼ同じ。
これを見てもそう思うでしょ。
年代物の鑑定なんてやったことないから仕方ない。
値段の桁数が多いパネルを開くことになろうはずも無いから価値もわからないしね。
「で、少しは何かわかったのか?」
教授の後ろで腕を組んでいるヴィリディスに訪ねる。
ちなみにであるが、フラウは教授が作業しているのを眺めるのが飽きたのか、地面を掘っては埋め、掘っては埋めとショベルで遊んでいる。楽しいのか?
「今のところ、何もわかってはいない。だが、オレが書き写した遺跡の文様はやはり文字だったことだけは判明したぞ」
「文字ねぇ……。判読出来れば幸いなんだろうな」
僕たちが普段使っている文字とは全く異なる構成の文字は判読できない。
殆ど暗号に近い。
暗号だったら何とか解読できるかもしれないが、遺跡の文字は暗号とは違うので判読は難しいだろう。
「それで、教授は何をしているのだ?」
「教授は文字を書き写している所だ」
「ふ~ん。何回か来ていると思ったから、直ぐに解読できるかと思ってたよ」
「それは無いな」
「そうなのか?」
教授が文字を解読できていないのも不思議だが、壁の文様を写し取っているのも不思議に思った。
遺跡を知っているのだからすでに文様を写していたと考えた方が本来は自然だからだ。
それ故に僕は”そうなのか?”疑問を口にしたのだ。
「教授は現場で研究する方が多くてな。書き写す事なんかめったにしないんだ。そう言うのは助手の役目なんだ」
「って事は、本来はヴィリディスがしなくちゃいけないんじゃ?もしくは連れてきた助手の仕事かな?」
「本来は、な」
「今回は違うと?」
「そう言う事になる」
どういう事だ?と、僕は疑問を浮かべる。
壁の文様を写しているのは教授本人。
そして、連れてきた助手の姿を確認するとこの場所には誰も見えない。
何処かで作業をしているのだろうが、教授を放って置いて良いのだろうかと思わなくもない。
護衛だったらヴィリディスとフラウに頼めば事足りるから足手まといの助手は他に行ってても良いだろうが……。
「今はこの場で話すことが出来ない。何処で聞いているかわからないからな」
「そうなのか?まぁ、この件はいいか……」
いろいろな疑問が脳裏に浮かんでくるが、この場で何も話してくれないとなれば無暗に聞くのも憚られる。何らかの理由があるのだろう。
僕が寝ていた間に何か聞いたか、それとも僕たちと知り合う前に聞いていたか。
様々な疑問が脳裏を過る。
とりあえず、大人しく警戒任務だけ行う事にしようと、くるりと身を翻すのだった。
※値段の桁数が多いパネル
某東京7チャンネルの鑑定団の事。
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