-49- トロール考察

 オレの横でスースーと寝息を立てているのはボストロールに致命傷を与えたコーネリアス。今は怪我を治すためにポーションを飲んで安静にしている。

 いつも思うのだが、ポーションと言うのは凄いな。怪我をしてもあっという間に治ってしまう。その分値段が高いのは仕方がないだろう。

 ゴブリン何匹分になるのだろうな。

 今回はトロール狩りって事でクリガーマン教授が用意してくれたのだ。有難いことに。


 こいつがトロールを切り裂ける剣を持っていなかったら、こうしてテントを張り休んでいるなんて出来なかっただろう。今頃は何処か森の中でトロールの襲撃にビクビクと恐れを抱きながらズンと沈んでいた事だろう。

 それが無かっただけでもコーネリアスに感謝するしかないな。


 さて、今回駆除したトロールについて考えてみようか。


 この遺跡に巣くっていたトロールは合計九体。

 ボスが一体。

 正妻と見られるメスが一体。

 ハーレム要員として少し地位が低いメスが四体。

 使い走りとして使われていたオスが三体。


 食料は使いっ走りのオスに一任ってヤツだ。


 こいつ等、いい生活してたんだな。

 羨ましい……。


 ……。


 念のために言っておくが、メスをこれだけ囲ってハーレムを作った事じゃないぞ。

 何もしなくても食べ物を運んでくる生活にだからな。

 勘違いしないでくれよ……。


 すまん。

 一人でいいからパートナーは欲しい。

 でも、拘束されるのも嫌だな……。

 それは謝っておく……。


 ……さて、話をもどして。


 ボスを頂点としてメスを蔓延らせて夜な夜な性欲のはけ口にする。

 メスもそれを期待してボスの傍にべったり。

 若いオスもいたが、それらには目もくれずにだ。

 強いボスの種を貰いたいのは本能なのだろう。

 オレたちから見て顔の善し悪しなんて判別つかないからな。どんなに醜くたって自分と同じ顔なんだからそれで選ぶ筈も無い。

 やはりトロールにとって腕っぷしが選ぶ理由なんだろう。


 とは言うが、若いオスは何故この群れに従っていたのだろうか?

 いくつか理由が思いつく。


 一つはボスの後釜を狙って群れに従っていた場合。

 何らかの原因でボスが死んでしまった時、宙に浮いたメスを独り占め……。いや、それは出来ないな。

 オス一体でメス一体を手籠めにする、そんなところだろう。

 それを狙っていた?


 二つ目はボスの目を盗んでハーレム序列下位のメスを自分のモノにする場合。

 ボスの目を盗むのはそこまで難しくは無いだろう。

 だけど、ボスがそれを許すかどうか……。

 下位とは言え、ボスに従うメスだ。可愛いハーレム要員が訴えれば若いオスは直ぐに村八分にされてしまうだろう。

 それに、弱いオスにメスがなびくかも怪しい。


 三つめだが、これが正解じゃないかと思う。

 それは、若いオスがボスの血を引いた子供たち、と言う場合だ。

 考えても見てくれ。若い個体はメスよりも小さい。

 この群れの中で小さいだけかもしれない。

 ボスが三メートル位、メスが資料にあったほどの身長。そして若い個体がそれよりも小さく、まだ成長途中だったのではないかと考えるとしっくりとくる。

 だから平気で狩りをさせていたり、ハーレムを囲っていても手が出なかったのだろう。

 自分の母親たちを襲うなどトロールでも嫌だった。その位は分別がついたと考えてもいいかもしれない


 その証拠はあるのかって?

 確かに証拠はすでにない。

 トロールが全て死んでしまったからな。

 それでもオレたちは見たんだ。

 若い個体が治癒能力を有していたが、ボスやメスのトロールは治癒能力が働いていなかった。


 若いオスは巣の中に入れず、ハーレム要員にも手が出せず、そして、ボスに逆らうなど考え無かったのだろうと。


 もしここにバシルがいたら歓喜の舞を踊っていたに違いない。

 それにしても惜しい人物を亡くしたものだ……。

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