-45- トロール狩り17
※2021/11/5 13:30修正しました。
僕が切っ先を向けるとボストロールは殺られまいと反撃の体勢を整えようとしているのがわかる。
肩では不利だと切断された右手を探し出して手に取り、それをくっ付けようとする。
「あれ、なんかおかしい?」
たしか、少し小型のオス三体と戦ったときに一度腕を切り落としていたと記憶している。
その時も目の前のボストロールと同じように腕を拾って切り落とされた切断面にくっ付けてしまった。そして、何も無かったかのように再び暴れた、と。
だけど、目の前のボストロールは右手を切断面にくっ付けようとしているが一向に治らない。滴り落ちる真っ赤な血液、だらんとして動き様も無い右手。
ボストロールにある筈の治癒能力が働いてないのだろうか。
ちらりともう一体のトロールへと視線を向けると、兵士たちが”わぁっ!”と群がって打倒している所だった。
ボストロールと同じように治癒能力が働いてないらしく、体のあちこちに槍の傷を付けられ真っ赤な血を流しているのが倒された原因なのだろうな。いくら、二・五メートルの巨体とは言え、あれだけの傷を付けられ、血液を流したら、そりゃぁ倒れるしかないだろうね。
目の前のボストロールもハーレム要員の三体プラス一体も治癒能力が働いてない。
しかし、最初に倒した若いオスたちは治癒能力を使っていた?
そうすると、ボスとその傍にいた仲間だけに治癒能力を働かせない何かが起こっていた事になる……のか。
まぁ、それは後で検証するとして、今は目の前のボストロールに全力を向けねばならない。右手首から先を使えなくしたとは言え、左手がまだ残っているからね。手負いにしてしまったから何をするか見当も付かない。
それでも十全な体勢でないから、戦闘力低下は見込んでも良いだろう。
左右のバランスが崩れているだろうし、血液を徐々に失っているのだから、時間の問題だろう。
「とは言いながらもねぇ……。あの顔は怖い怖い……」
腕がくっつかないとわかったボストロールは、諦めて右手を放棄し左手で棍棒を掴んだ。
右手を切断した僕に一層の殺意を向けてくる。
怪我が治らない事もそうだが、自らが殺される恐怖を始めて知ったんだからそうもなるよな……。
「受けて立とう……、ってはならんのだよ。お前たちとは分かり合えないからな」
思想が同じであれば一騎打ちをしてもいいだろうが、トロールはそんな知能を持ち合わせていない。それにこの場を占拠している打倒す敵だ。
口で言って済むのだったら、それで済ますが、そうはならない。
今は駆除する相手、害獣でしか無いのだ。
僕は一度、後方へと飛び退いた。
決定打となる一撃は僕が与えなければならないけど、牽制や弱体化を狙うんだったら誰でも良いからね。
ヴィリディスやフラウ、それに魔法兵であってもね。
僕が間合いを取ったことで遠距離攻撃の手段を持つ彼らの攻撃が飛んできた。フラウはヘッドショットを狙って頭を、ヴィリディスと魔法兵は僕が切断した右手首を狙って。
それで倒せればすごく楽なんだけどね。ゴブリンとかと違って”火矢”も弓矢も全く効かないから始末に負えない。
間合いを取った僕に近づきたくても散発的に飛んでくる攻撃に対処するだけで精一杯になっている。棍棒を振り回し飛来する攻撃を撃ち落して。
さて、頃合いかな?
流石のボストロールも僕に全てを向けるわけにいかなくなって注意が散漫になり始めた。棍棒の振り方も弱弱しくなりつつある。
左足を一歩引いて刀身を左にして構える。
狙いは棍棒を振るっている左腕。
そして、第二目標としてトロールの心臓。
注意散漫になった今なら腕を切り落とすのはタイミング見れば出来るだろう。
ただ、トロールの心臓は僕の目線よりも少し上だ。いや、随分上と思っても良いだろう。そこを狙うのはキツイだろう。飛び上がりつつ突き刺さねばならないのだから。
こここそ僕の腕の見せ所だ。
僕は周囲から降り注ぐ攻撃の間を見切り、ボストロールへと飛び出していった。
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