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「それで、話ってなんだ?」
用意した朝食がすでに腹に収まって、半分ほど残ったお茶を啜れば後は片づけて出発するだけになった。
そうなって始めてヴィリディスが顔を上げて僕に声を掛けてきた。
昨日のうちにどれだけ進むのかは話してあるので、片づけ出来ればそれで済んでしまうのだ。
「あまり人には聞かれたくないが、まぁ、いいか」
キョロキョロと辺りを見渡すが誰の姿も見えない。
街道のすぐ傍での野営だったから誰かが傍を通ってもよさそうなのに……。
丁度良いと僕は頭を書きながらぼそりと口を開く。
「実はさぁ。僕のスキルカードだけ、変な文字が見えるんだよ」
「ふ~ん。そう言えば、鑑定持ちって言ってたけど、それの影響?」
「う~ん……。実はよくわかってないんだ」
「判らないの?」
「そう……」
正直なところ、鑑定スキルが影響しているのかハッキリと判らない。それが答えだ。
男爵家にいた頃に一度だけ、メイドのマリアが持つカードを見たことがあるけどおかしな表記にならなかった。
たぶん、この場でフラウやヴィリディスのスキルカードを見ても同じだと思う。
とりあえず、僕のカードを見てもらうとしよう。
「これ、僕のスキルカード」
「見ちゃっていいの?」
「どうせ大したこと書いてないしね」
そう、土魔法の成長限界が1しかないのと、家名の所が消されている、それだけだ。
それだけなんだけど……。
ちょっと悲しくなるんだよな。
才能が無いってのはほんと、悲しいよ。
二人に僕のスキルカードを見てもらったけど、やはりと言うか、案の定と言うか、驚いていたよ。一目見ただけでその表情だ。家名が消されていたことに衝撃を受けたのかもしれない。
「コーネリアス。お前、貴族だったのか?」
「そう。言ってなかったけどね。でも今は家名を名乗れない、ただの一市民だ」
「ふ~ん。何処か雰囲気が貴族っぽかったのはそれだったのね~」
スキルカードも見せてこなかったし、元貴族だってのも話さなかった。
事実は小説よりも奇なり、と言うが、その通りだと思うよ。
僕の事だけどね。
「失望したかい?」
「いいえ~」
「オレも気にしないな」
「だよね。家名が戦ってるわけじゃないでしょ?」
今の僕には二人の言葉が暖かく、胸にしみる。
こんな二人とパーティーを組めるなんて、なんて嬉しい事だろう。
思わず涙があふれてくる……。
「感動している所、悪いが時間が無い。本題に入ってくれるか?」
「すまない」
朝食を終えた食器や調理道具を片づけつつ、僕は口を開く。
「僕のカードにだけなんだけど、不思議な文字が見えるんだ」
「それは聞いたぞ。どんな文字が見えるんだ?」
そう言えば言ったな。
その説明をする。
「簡単に言うとね……」
スキルカードに但し書きのような形(※が但し書きと思う)で土魔法以外のスキルが記されていた。
火、水、風と。それと共に成長限界の数字もだ。
そして、さっき久しぶりにスキルカードを眺めてみたら、光と闇の二つも記されていた。こっちは成長限界は
当然、火魔法が記されていて成長限界の数字が記されていたから使えると思ったけど、全く使える気配はなかった。ただ単に書いてあるのが見えただけ。
だから、本当か嘘かは正直なところ判断が付かない。
「「……」」
僕が告げたことに二人は作業していた手を休め、腕組をし始めた。
何か深慮しているのだろうが、その答えを聞くのが少し怖い。
気が触れたのかと言われてしまうのが……。
「世の中、不思議なこともあるもんなんだな……」
「そうね……。ま、不思議なことがいろいろと起こったんだから、ワタシたちの知らない何かがあっても何となく受け入れちゃうわね~」
二人が発した言葉に僕が唖然とした。
僕が考えていた事と正反対の答え。
やっぱり僕は三国一の幸せ者のようです。
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