-23-

 翌朝。

 まだ夜が明けきらぬ時間に僕はテントから這い出した。

 焚火の傍ではヴィリディスが番をしている。


 昨日は一番がフラウ、二番が僕、そして、三番目が今火の番をしているヴィリディスが周囲の警戒に当たっていた。それ故に彼が焚火の番をしているのは当然と言えば当然だった。


「おはよう、ヴィリディス」

「コーネリアスか、おはよう。お前たちが交代の時に艶めかしい声が聞こえたらうっかり手が滑ってしまうと思ってたがそうはならなくて安心した」

「あのなぁ……。流石にそこまで節操が無い訳じゃないぞ」

「そうか。それなら安心だ」


 確かに僕とフラウは男女の仲だが、第三者がいて、危険な夜を警戒しなければならないこの場で事に及ぶのはいかがなものかと心得ているよ。当然、フラウだってね。

 まぁ、街に到着して二人の部屋を取ったら判らないけど……。


「お、お茶でも貰おうかな」


 焚火にかかってるポットからお湯を拝借。

 カップに茶葉を適当に入れてお湯を注ぐ。

 適当だから味は……ちょっと薄いかな?


 お茶を作っているともそもそともう一人起きだしてきた。


「おはよう、フラウ」

「おはようさん」

「おはよう、二人とも早いね」

「ヴィリディスは番だ。僕は今さっき起きたばかり。飲む?」


 起き抜けのフラウにコップを向けると頷きで返してきた。

 フラウのコップに茶葉を入れ、お湯を注ぐ。

 茶葉の量は適当だ。

 僕が入れた量よりもちょっとだけ多くした。適当な濃さになっているだろうか?


「そうそう、思い出した」


 僕は鞄を引っ張り出し、ポケットに手を突っ込みスキルカードを取り出した。

 久しぶりにスキルカードを見ようと思う。

 実はこの二人には僕の秘密を告げて無いんだよね。

 スキルカードがあんな風に見えるのはどうしてか、判らないから。


 なぜ、この場面でスキルカードを見ようとしたのかは一つ理由がある。

 昨日、ヴィリディスから教えてもらった属性魔法が二つ増えたからだ。

 僕の知識の中に光魔法と闇魔法、二つが増えたはずなんだ。

 それで変われば良いんだけど……。


「どうした?スキルカードなんか出して」

「いや、ちょっとね……」


 特別な理由を伝える事は無いだろう。

 とりあえず、スキルカードを見てみよう……。


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 名前:コーネリアス=フォースター

 教会:ウェール教会

 スキル:※火(5)  ※光(?)

     ※水(3)  ※闇(?)

     ※風(0)

      土(1)

 その他スキル:鑑定(▲1)

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 あれ?増えてる?光と闇が。


 やっぱりそうか!

 僕の知識が増えると同時にスキルカードに記されて、且つ、隠された項目が見えるようになるのか……。。


 でも成長限界が判らない。

 使えるか使えないか判らないからだな。

 ただ、これではっきりした。

 光属性と闇属性が存在すると、ね。


 ハッキリしたところで二人に話すとしよう。

 大丈夫だよね。

 結構な秘密を共有しているから……。


「少しいいかな?話があるんだけど……」

「いいぞ……と言いたいところだけど、先に朝食を作ってしまおう。その後でいいか?」


 そう言われてみればお茶を少しすすっただけだった。

 腹の虫が盛大に鳴きそうな気配がする。

 隣を見れば涎を垂らしそうなだらしない口元をしている。


 確かに朝食が先だな。


 僕たちは調理器具を取り出し、買い込んだ乾燥野菜と干し肉、そして、焼き締めたパンを取り出し簡単な朝食とした。

 街から街への移動中。これ以上の贅沢をするんだったら、野生生物を狩って来るしか無いだろうね。


 そうやって用意した朝食を僕たちは腹に詰め込むのだった。

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