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 ヴィリディスの話が終わると静けさが辺りを支配する。

 三人ともが口を閉ざし、焚火がパチパチと爆ぜる音だけが虚しく響く。

 彼の話が本当の事だとしたらとてつもない秘密を教会が隠していることになる。

 それを知り得た僕たちはどうなるのか?

 今、それを触れ回ることは出来ない。気でも触れたか?と思われて何処かへ監禁状態にされるだろう。

 特に協会がどう出てくるか判らない。

 僕の父上があれだけ恐怖に感じていた教会だからだ。

 王よりも強大な権力を持っているのだ、僕たちにとって最悪な事態を招くことだけは確かだ。

 だから今は口を閉ざすしかないのだ。


「で、これからどうするんだ?」


 焚火がパチリと爆、ぜ組んでいた小枝が崩れた。

 それを合図にヴィリディスにこれからの予定を訪ねた。

 ウェールの街にいると危険に見舞われるかもしれないのだけは判ったと付け加えて。


「オレとしては冬の間、暖かい所へ行ってみたいと思ってたところだ。だが、この国は何処へ行っても変わらないからな。それならば、知り合いに会ってみようと思うのだ」

「知り合いって、また暗殺者?」


 凍える心配がない南への旅は魅力的だ。寒いよりも暖かい方が良いからね。

 鳥たちは南へと渡るのもいるからそれに付いて行くのも楽しそうだ。

 だけど、王国はそこまで広くない。最南端の街に付いたとしても雪が降らないだけだ。結構寒いと聞く。

 北の街だとかなり雪が降り積もるみたいだけど。


 国外に出る方法もあるけど、周辺国とは余り仲がよろしくない。一応、戦争はしない程度には関係は保っているが。だが、他国に入れば教会に狙われるよりも先にスパイ容疑で捕まり投獄され、そのまま亡き者にされる未来もある。


 それを考えると王国内に限るのだが、僕やフラウはウェールの街近辺しか知らない。何処へ向かおうかと考えても良い案が浮かばないのでヴィリディスに頼るしかないのだ。恥ずかしいことに。


 そのヴィリディスが向かおうとしているが別の知り合いだと言う。

 彼の事だから何らかの研究をしているのだろうと予想が付く。

 そして、その職業も……。

 疑心暗鬼に陥っているフラウが物騒なことを言うのは何となく理解できるのだ。

 と言うよりも、僕もそう思った。


「暗殺者って事は無い。知ってるので暗殺者は……」

「えっ、暗殺者ってそんなにいるの?」


 ヴィリディス自身の友好関係を脳裏に思い浮かべたのだろう。

 端から確かめてどんな職業だったかと。

 その一瞬の沈黙に、フラウが思わず反応した。

 って、反応早いよフラウ……。


「……うん、アイツだけだな。他は知らん」

「……ちょっとだけ、ホッとしたわ」


 後ずさりそうになったフラウがホッと溜息を漏らしていた。

 僕も同じだけどね。


「それで、今度のはどんな人だ?」

「あぁ、それはしっかりとした身持ちの人だから大丈夫。教授だ」

「教授?何処の?」

「王立高等教育学院の」

「「は?」」


 僕もフラウも思わぬ答えに呆けるような声を出した。

 ウェールの街にいたヴィリディスの知り合いが暗殺者だった。それを知ったのは殺された後だったが。それを踏まえると、他の知り合いもすねに傷を持つ職業だろうと何となく思うだろう。

 その予想が完全に外れ、さらに全く逆と言っても良い職業なのだ。呆けるのも判るだろう。


「王立高等教育学院……。もうね、ヴィリディスの交友関係が判らないよ」

「判らなくても良いぞ。知り合って、少し仕事を手伝った、それだけの仲だ」

「いやいやいやいや!それ、すごい知り合いだと思うぞ」

「そうか?」


 なんだろう、このヴィリディスの万能感。

 彼一人で何でも研究できてしまうんじゃないかと思うのだが……。


「王立高等教育学院のある王都はすこし遠い。だけど、今は別の場所にいるみたいだからそこに向かう」

「うん、判った。もうね、お任せするよ」


 どのような答えを口にして良いかわからず、僕たちはあっけにとらわれたまま夜が過ぎ去って行くのであった。

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