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 僕たちのパーティーから一時的にヴィリディスが抜けた。

 非常に痛い。

 斥候のフラウと前衛の僕の二人に遠距離から攻撃できるヴィリディスがいてこそ安定して魔物を狩れていた。特に、簡単に発動して決定打になったヴィリディスの魔法は助かっていたと今更ながらに感謝しているのだが……。


 それよりも問題が起きている。


「魔猪発見!攻撃するわよ」

「周りは大丈夫だろうな?」

「ちょっと待って、今調べるから……」


 こんな調子だ。


 フラウの弓の腕は徐々に良くなっている。

 確実に仕留められるかと言えばそんな事は無いが、命中率は上がっているだけに文句は言えない。

 それよりもだ、軽い性格が表に出過ぎて斥候としての役割がおろそかになってきているのはどうしたものかと……。


 いや、僕にも原因があるのはわかっている。

 ヴィリディスに背中を押されたってのもあるが、今はフラウと一緒の部屋に泊まっている。まぁ、男女が一緒の部屋に止まっているんだから……。それ以上は言わなくてもわかるだろう。

 それが原因だって。


 一緒にいれば落ち着くかと思ったのだが、逆で浮かれすぎてる。

 それ故に、僕がフラウの感情をある程度コントロールしないとあのザマだ。周囲の警戒など簡単であろうに……。


「うん、大丈夫。引き付けるわよ」

「判った。後は任せておけ」


 僕は剣を抜いていつでも飛び出せる準備をする。

 その直後、フラウの弓から矢が飛び出して行く。


 ビュンと飛翔し、魔猪のお尻に深々と突き刺さる。


 ”ブヒーーーィ!!”


 けたたましい鳴き声と共に矢を射かけたフラウを見つけると、怒りに任せて突っ込んでくる。それと同時に僕は魔猪へと飛び出して行く。


 怒りに満ちた魔猪はフラウしか見えていない。僕の存在など全く見えないと言うように。

 そうなれば後は簡単だ。

 僕は魔猪の横っ面に向かうと勢いよく剣を突き刺した。

 頭とは行かなかったが胴体に切っ先がのめり込み、魔猪が駆けた速度が乗って心臓まで切っ先が到達。

 それですべてが終わった。


 フラウまでだどりつくことなく魔猪は短い生涯を終えるのであった。


「やっぱりすごいわね。良い人を見つけたわ。ワタシ、エライ!」


 この調子だ。

 フラウなら直線的に突っ込んでくる魔猪を避けるのも簡単だろう。

 とは言いながらも心臓に悪いから少しくらい避ける素振りを見せてくれても……と思うのは贅沢なのだろうか?


「それは良いが、周囲の警戒をしっかりしてくれよ。これだったらフラウと一緒にいない方が良いと思うぞ」


 そんな事を言うと、フラウは頭を殴られたかのようにショックを受けているようだった。

 でも事実は正確に伝えねばならないだろう。辛辣に聞こえるかもしれないけど。


 だって、僕だってこんなところで死にたくないし、つもりでいるんだから。


「う、うぅ。それを言われるとつらい……。仕方ないわ、少し自重するわ」

「いや、何時も自重してくれ。仕事は仕事と割り切ってくれないと僕も困る」


 これだけ釘を刺せば大丈夫だろう。

 今日も生き残った。

 魔猪を売ればかなりの収入だからな。


 っと、早い所運ぶか処理をしてしまわないとな。

 血抜きはしておかないと、味が落ちる。


「血抜きだけしてサッサと納品してしまおう」

「そ、そうね。今日の糧は明日の命。頑張って処理するわよ~」

「ほどほどにな」


 僕たちは手早く魔猪の血抜きを終えると、丈夫な木の枝に魔猪を降ら下げ、意気揚々とウェールの街に凱旋するのだった。








箱根の大涌谷だったかな?忘れた。

黒たまごを1個食べると3年、2個で7年、3個で一生長生きする、って昔聞いたことがあるのパロディです。

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