-45- 教会 1
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
コーネリアスたちが無事にゴブリン軍勢の討伐報酬を受け取ったのと同時刻。
そこより少し離れた街の教会では額にしわをよせた大司教が唸り声を上げていた。
「大司教、そんなに難しい顔をしていかがしました?珍しいですよね」
「あぁ、心配事があってな」
「心配事ですか……」
大司教の御心の内等、
しかし、大司教がそこまで胸の内を痛めているのをそのままにしておくなど、出来るはずもありません。
では何をそんなに御心を痛める事があるのか、と思考すると一つの答えをなんとか思い出すことができたのです。
「もしかして、あのゴブリンが占拠した遺跡の事ですか」
「そうだ。そろそろゴブリン共の駆除が終わっていると良いのだが……」
あの遺跡とはレスタートンと言う中規模都市の西に三日ほど歩いた森の中に見える打ち捨てられた遺跡の事です。
大司教が力を入れている複数の遺跡調査の内の一か所ではあるのですが……。
何カ所も調査する都合上あの遺跡、ああ面倒ですね、”レスタートン遺跡”とでも呼称しましょう、そこに久しぶりに向かったらなんとゴブリン共が占拠しているではありませんか。しかも巣と言うには馬鹿げた数でした。もはや軍隊です。
一匹一匹は弱くとも、それだけの数を少数の調査団ではどうする事も出来ません。
司教になるにはある程度戦える必要があるとはいえ、数が数です。
調査する間もなく帰ってきました。
そのまま放置などできる筈も無く、”教会騎士団を派遣する”、と思ったのですがそもそも教会騎士団は軍隊ではなく教会の警護を目的としているので殲滅できるほどの数を揃えるのは大変です。各地に散らばった騎士団を一カ所に集めるのは時間が掛かります。
なので、レスタートンの領主にゴブリン達が相当数集まっていると泣きついた……と言うのは語弊がありますね、報告したのです。
ゴブリンが軍隊規模に集まっているのは
その作戦がそろそろ終わりを迎えると思うのですが……。
「そうですね。順調に進めばあと数日で遺跡の調査が再開できるでしょう。そうしたら調査を再開できます」
「確かにそうだが、私が心配してるのはそんな事ではない」
「調査の再開が”そんな事”ですか?」
「そうだ。調査はあくまでもオマケだ。いや、違うな。調査と見せかけた現状維持にある」
現状維持?
遺跡は何もしなければ朽ちて行きます。
雨ざらしになれば古代の文字など消えてしまうでしょう。
それらを残しておくのかと思ったのですが、どうやら大司教が御心の内に描いている姿は違ったようです。
「
「仰る意味が判らないのですが?」
遺跡調査を行っているのですから、全てを保存する必要があるのではないかと
違うのですか?
「まだお前には早いだろうが、一つだけ教えておいてやろう。あの遺跡には見つかっておらぬが、我々は生きた遺跡を見つけ我々の管理下に置く、もしくはその破壊だ。これが上層部の意向なのだ」
「ますます判りません」
「判らなくても結構」
大司教からとんでもない発言が飛び出してきました。
遺跡調査は教会主導で進められていますから管理下に置くのは何となくわかります。
領主と言えども無駄な税金を投入するほど遺跡調査などしていませんからね。
しかし、破壊とは穏やかでありません。
とんでもないことに首を突っ込んでしまった気分です。
”口は禍の元”と言いますが……、いえ違いますね、”後悔先に立たず”とはこの事でしょう。
口から出てしまった事は覆りませんし、それが原因で後悔してしまう程でしたから……。
今は大司教からのお小言を頂きながら首を垂れるしかありませんね……。
※上構物:上構は上に出ている建物の意で使いました。なので上構物は地上に出ている建物と受け取ってもらえるとありがたいです。
※一応、この話で第1部を終了とします。
簡単な人物紹介等を挟んで第2部となります。
1日だけお待ちください。
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