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 僕とフラウ、そしてヴィリディスがパーティーを結成して約一週間。

 郊外に出ては簡単な討伐任務をこなしていた。

 三人の連携は徐々に良くなり、今のところは怪我一つなく順調に討伐数と稼ぎを積み上げていた。


 一人でこなしていた時よりもほんの少し稼ぎは減ったけど、安心感に繋がると考えれば妥当な所であろう。


 ただ、フラウとヴィリディスは少し違ったようだ。

 安心感はそうだが、安定した稼ぎを得られて喜んでいた。

 得た報酬を均等に三分割。余った端数は食事時に消費されるから本当に三分割になっているが。


 やっぱり安心感の一番は怪我が無い事だろう、皆がそう思うのだった。




 僕たちが安定して討伐数を伸ばし、これから安定した稼ぎが期待できると喜び合い、一日の〆として冒険者ギルドで食事を楽しんでいる時に激震が走った。

 他の冒険者も僕たちと同じようにワイワイと楽しんでいるその時にだ。


「みんな聞いてくれ!大きな依頼が依頼が出る、ゴブリン退治だ!」


 ゴブリン退治。


 まぁ、何時も行っている依頼でもある。目新しさは全く無い?

 大きな巣が出来ているとか、街道に出没しているとか、そんなのはしょっちゅうある。最近はそれが顕著化しているんだけど。


「レスタートンの東の遺跡にゴブリンが大規模な巣を作った。それの討伐だ。討伐数に応じて報酬が出るぞ!」


 大規模な巣と言われ、どのくらいの数?と首を傾げて疑問に思う。

 僕もピンとこない。

 どの冒険者も同じように首を傾げていた。


 その疑問に答えるように、ホールや食堂にいる冒険者たちに資料が配られた。グループに一枚ずつだけどね。

 それを見て皆が一斉に沸き立った!


「軍隊みたいな数だなぁ」

「リーダーがいて、兵隊がいるんだから一種の軍隊でしょ」

「確かにな。悪知恵は働くだろうが、統一した動きが出来るかで違うだろうな」


 三者三様の、と思いきや、皆が”軍隊的な”との意見に頷きを返した。


 千までは届かないだろうが、相当数のゴブリンが存在している、らしい。

 リーダーがいて兵士がいる。まさに軍隊。

 だけど、ヴィリディスが口にした通り、統一された動きが出来るかで脅威度は異なるだろう。


「えっと、報奨金は領主から出るそうだよ」


 レスタートンはここから南へ向かい、徒歩数日の場所。

 当然、このウェールの街とは領主が異なる。ウェールの街は辺境伯の領である。

 領主がスポンサーとなっているのだから、報酬は踏み倒される事は無い。

 まぁ、屠ったゴブリンの耳を横取りされる可能性は無きにしも非ずだけど。


 ただ、纏まっているから屠ったゴブリンの処理は大勢で行えるから楽かもしれない。


「なるほど。だから街道なんかに現れてたのね」


 最近、南の街道で目撃されたゴブリンは、この遺跡に入れなくてあぶれた個体であると推測できる。

 もしくは食料調達係?


「遺跡とは言っても、大昔に破壊された街の痕跡ってだけだからな。そこまで大きくは無いし、城壁のない街など攻めてくださいって言ってると同じだ」


 ヴィリディスはそのようなものまで頭に入っているらしい。


 有史以前に作られたであろう遺跡。

 森の中に見つかって、教会主導で調査が進んでいる。が、いまだに何時作られて何時破壊されたか、人口はどれくらいだったか等殆ど判っていないらしい。

 調査の為と馬車が通れるほどの道が整備されているのだとか。


 一つだけ確かなことは中央に塔が作られていたことだけ。

 その塔も先端はすでに無く、地上と地下合わせて数フロアが残っているだけとか。


 何故占拠されていると判ったのかだが、恐らく、調査団が久しぶりに向かったときに気が付いて領主に泣きついたのだろうと推測は出来る。教会主導で討伐してくれても良かったんだがな。


「完全に廃棄された遺跡かぁ。見学したいっちゃしたいかな?」


 この周辺だけで生きてきた僕は、その遺跡に興味深々だ。

 なんか、不思議に惹かれている自分がいる。


「なら、討伐に参加でいいわね」

「オレも参加でいいぞ。普段より報酬が良いからな」


 普段、ゴブリンを討伐してもそこまで稼げない。

 むしろ処理に手間取り赤字と言えるかもしれない。

 その報酬の倍を提示されたのだから、行かぬ選択肢は無い。しかも参加するだけで報酬を受けられるオマケも付いている。

 他の冒険者も出てくるだろうから、そのおこぼれを貰うのも良いだろうね。

 ここまで大規模なゴブリンの巣だと領兵も出てくるだろうし、楽に稼げるだろう。


「それじゃ、明日の午前中は準備ね。保存食は大目に買っておくのよ。テントは……コーネリアス、お願いね。一張りで良いわ」

「わかった。適当に見繕っておく」


 テントの購入費用を少しだけ分けて貰った後は、緊急発生した依頼についてじっくりと、さらに今後の方針も含めて話し合いをするのだった。





※よく”適当”と使いますが、意味的には、【ある性質・状態・要求などに、ちょうどよく合うこと。ふさわしいこと。】で使用しています。

ですので【いい加減に。要領よく】と言った意味合いでは使ってませんので間違えないでください。


※明日(2021/10/2)は予定があるので、更新が少ない可能性があります。なので、頑張ってアップしました。

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