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 長旅に必要な装備を整えた僕たちはウェールの街を出発した。

 ちょっと曇り気味の天候が気になるが、ゴブリン軍団の討伐は待ってくれないから仕方がない。時間が掛かっても、と言うのであれば雨の心配のない日に出発してもよいが、溢れんばかりに膨らんだゴブリンたちがどのような行動を起こすのか、見当がつかない。


 嫌がる冒険者たちを強制的にりだすってのも一つの手だが、そうすると反発が大きい。ここから冒険者が消えると領兵の負担が増えるだろうし、税金もすぐにすっからかんだろう。

 そんな訳で冒険者を金で釣るのが一番楽なのだ。


 あ、王国の外れ、辺境伯の領都では別だけどね。

 戦争も見据えた訓練の一環で魔物退治を行っているから。


 レスタートンまでの旅は順調に進んだ。

 三日程だから旅って呼ぶほどでもないか。ただの移動だね。


 時折、はぐれゴブリンを見つけては討伐していたから三日の旅程が一日増えた、ってのはあった。

 しかも、レスタートンに向かっているのは僕たち三人だけじゃないから、ゴブリンを見つけての討伐は楽勝だった。誰かが見つけたら、わぁ!って群がるんだもんな、早い者勝ちだって。

 遺跡に住み着いた殲滅対象じゃないけど、何時もより高い報奨金が出るから、そこそこ儲けられる。それ故なんだけど……。


 けど……。


 死体はしっかりと処分しましょう。

 埋めるなり、燃やすなり。

 全部とは言えないが、耳を切られたゴブリンが放置されているのは何とかならないものだろうか?

 やっぱり冒険者と言うのは信用されない職業ってのはこういうのから始まっているんだなと思い知らされる出来事だった。







 さて、そうしているうちにレスタートンの街へと到着した。

 僕とフラウは初めて訪れる場所だったが、ヴィリディスは何回かは足を運んだことがあるらしい。陰のある男と思ったが意外と好奇心はあるのかもしれない。


「随分活気があるんだな~」


 街の中に一歩足を踏み入れれば、ウェール以上に活気に満ち溢れていた。

 だが、ヴィリディスに言わせるとそうではないらしい。


「違うな。遺跡のゴブリン退治に集まったオレ達のような冒険者や隣の街から援軍として参加した兵士達が騒いでいるだけだ。普段はこんなに騒がしくない……」


 活気のみを比べるとウェールに軍配が上がるが、程よい静けさのレスタートンの方が好みであるとヴィリディスは口にした。それ故に溜息を吐いて残念がっていた。


「でも、この依頼が終われば元の街に戻るでしょ。どうせ、ワタシたちだってすぐに出て行くし、街に常駐する訳じゃないでしょ」

「……それもそうか」


 フラウの正論にヴィリディスは少し考えた上で首肯した。

 騒がしい祭りであるにしても、会場は西に進んだ森の中だ。ここはあくまでも準備会場でしかない。

 しかも祭りの主人公たちは準備会場でお金を使って直ぐ移動してしまう。

 この活気は商売人が物を売る為に騒ぎを起こしているに過ぎない、それが答えである。


「ウェールでしっかりと装備や食料を整えてきたんだから、あの騒ぎに乗らなくてもいいのは助かる。でも、早く宿を取らないと路傍の石と同じになるぞ」

「そうね。一部屋でも良いから部屋を取ってベッドで寝たいわねぇ。一応、信用してるからね?」


 数日の旅を快適に過ごせるようにと雨具寝具兼用のローブや食料、矢などの消耗品はすでに購入済みだ。多少減ったので揃えたい気持ちもあるが。

 それよりも数日とは言え旅の疲れを癒したいのは仲間の総意でもあるのは確かだ。


 最高なのは一人一部屋だが、恐らく無理だ。これだけの人が集まってしまったらね。

 だから、最低でも三人部屋を一つ。雑魚寝は勘弁してほしい。

 僕やヴィリディスから見てもフラウと言う魅力的な女性がいるのだからね……。


 って、僕たち、一応信用されていると見ていいのかな?

 まぁ、折角の仲間に酷い事なんかしないよ。

 寝ている間になんて、ねぇ……。

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