-27- ヴィリディス1-1(1/2)
オレはヴィリディスという冒険者だ。
こんな口調をしているが、人と話すのは苦手だ。
本を読んだり研究や観察に没頭しているほうがよっぽど好きだ。だからってのもあるが、人づきあいが苦手ってのも追加しておく。
子供の頃に見た魔法にあこがれて、オレも何時かは魔法の研究者になりたいと思っていた。まぁ、祝福の儀を受けていなかったオレは使うこともままならなかったけどな。
それでも暇を見つけてはいろんな人に魔法を見せてもらった。
え、人づきあいが苦手だから声を掛けられないだろう、って?
そうなんだ。
好きなことに没頭していると周りが見えなくなるらしい。
だから、知らない誰かがいても好奇心のほうが勝って、ついつい話しかけてしまうんだ。
ソコ!典型的なマッドサイエンティストと言わない!
このオレのどこがマッドなのか、小一時間問い詰めたいと思うぜ。
それはいい。
オレは農家の
農家を継がなくちゃいけない。弟がいたがオレに継がせたかったらしい。
だけど、農家になるのは嫌だった。
だが、成人の儀までは子供なので逃げ出すわけにもいかない。
一応、魔法研究者になりたい、って言った事があるんだけど……。
ぶん殴られたよ。
親父にも殴られたこともないのに。……その親父に。あれ?
そう言う訳で、オレは二足の草鞋を履くことにした。
農業をとりあえず頑張って、そのうえで、魔法の研究。当然、お金なんてある筈もない。小遣いなんて貰えないんだからな。
それでも村長の家とか、教会とかに足繁く通って魔法関連の書物を漁った。まぁ、時間制限はあったがな。
それでもかなりの勉強になった。
一番良かったのは祝福の儀で貰ったスキルが火魔法だった事。これが一番大きい。しかも成長限界が3もあった。勉強とは関係なかったな。
小さい魔法から大きな魔法まで時間が許せば練習をしていた。夜は主に小さな魔法だけだったが。
練習内容も精度や火力など、多岐に渡った。
時折、気絶するくらいやったから、さすがにやりすぎたとは思う。
そんな時、村に魔物が襲ってきたんだ。
まだ成人の儀を受けてないときだったな。十三か十四の時だ。
ゴブリンとかウルフ系だったら可愛いもんだったが、巨大なイノシシが現れたんだ。
多分二メートルを超えていたな。
あれは恐ろしかった。
当然、村の男衆が総出で駆除に向かった。
毎日毎日、土と向き合っているんだ弱いはずがない。
戦争で駆り出されることもあるがな。
そして、男衆の活躍で魔物は退治された……が、村は滅茶苦茶になった。
土地は荒れ、家々は壊され、踏み殺された村人も少なくなかった。
オレの親父は何とか生き残って再び農家に戻れたのは幸いだった。
その魔物の止めを刺したのは誰だと思う。
当然、オレ……。
そんな訳ないだろう。
戦ったことすらないのに。
村長が魔法で仕留めた。
火魔法で顔面を焼いて殺したんだ。
あれはすごかった。
オレは心の高鳴りを感じた。
あの時以降、農作業に身が入らなくなった。
なんとなく惰性で作業している、そんな感じにな。
だから、親父はオレにこう言ったんだ。
「そんなに農業をやるのが嫌なら出ていけ!」
って。
オレの意思関係なく追い出されたよ。それだけオレに将来性を見出せなかったんだろうな。
でも、着の身着のままって訳じゃなかったから良かったけどよ。
もし野垂れ死んでもいいって思ったら、ぼこぼこにされて村の外にでも捨てられて人生終わってただろうね。そのまま魔物の腹に納まってただろう。それが、親父が考えた最低限の優しさだったんだろう。
ま、オレは自分の好きな事ができる、親父は一生懸命農作業に向き合う弟に家督を譲れる、万々歳だろう。
そこからはえっちらおっちら歩いて近くの街まで出て冒険者ギルドに登録よ。
成人の儀を迎えていなかったけど登録は可能だからな。だが、半人前としか見られなかったから報酬は酷かった。半年くらいの我慢で済んだが。
成人の儀を終え、一人前と見られてからは早かった。
街中の依頼をこなしながら、魔法の練習。
そして、魔法や魔物など、”魔”と付く本はなんでも読んだよ。
それが今のオレを形作ってるって訳さ。
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