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※少し修正(2021/09/30)



 飛び出したゴブリンを真っ先に攻撃したのはフラウだった。


 並びも何も考えないゴブリンたち。わらわらと走ってくると表現した方がいいかもしれない。

 だが、彼らが向かってくる速度は子供のそれとは違う。

 大人顔負けの速度、と言っても良いだろう。

 結構な速度を出している。

 簡素な武器とは言え、かざしながら向かってくる姿は恐怖心を煽ってくる。


 だが、背の高さは十歳児よりも低いし、腕や脚などはかなり細い。

 餓死寸前の子供かと思うくらいだ。

 あれで子供以上の筋力を持っているというのだから不思議としか言いようがないだろう。


「ふん、ふん、ふん……、六匹か、頂き!」


 五匹位とフラウが口にした数にプラス一。まぁ、誤差の範囲だろう。十分優秀な斥候とみて間違いない。

 その六匹の内、最後尾を走るゴブリンにフラウは矢を射掛けた。


 若干狙いがズレたようだが、首元にぶすりと吸い込まれた。

 腹にでも当たればと思っていたようだが、思わぬ戦果を見て即座に二本目の矢を番える。

 命を奪うまで出来なかったが、ずどんと地面に倒れ、戦闘から早々にリタイアした。


 次はヴィリディスの”火矢”が飛ぶ。

 ランク二の魔法で使用には比較的難易度が低い。それを無難に一射のみの発動だ。


 後ろに草むらが見えるから、コントロールを外れて着弾し火事になるのを嫌がったのだろう。得意とする火魔法なのだから同時に二つ、三つと出せたのかもしれないが実力の片鱗は見せて貰ったとするとしよう。


 その”火矢”が僕とフラウの脇を通り抜け一匹のゴブリンに命中した。

 ”ボンッ!”と着弾の音がして黒く焦げながらゴロゴロと地面を転がる。あれも虫の息だろうね。


 あと四匹!


 ヴィリディスが倒したゴブリンがゴロゴロと地面を転がった影響で、その後ろを走っていた二匹が足を取られて転んだ。

 失笑こそしないが、間抜けな奴とみんな思っただろう。


 それでもゴブリンたちは足を止めず僕たちに向かってくる。

 子供以上の知能を持つと言われても、戦闘に関して言えば、子供以下でしかない様だ。

 六人いて、四人も倒されれば人の子供なら恐れを抱いて退却しているに違いない。


 僕たちまであと三十メートルとなったところで僕は脱兎の如く走り出した。

 遠距離からの攻撃で二人に全滅まで任せてしまっても良かったけど、僕の見せ場も作りたかったからね。

 あえて先頭を走る槍を構えたゴブリンに向かう。


 知っての通り槍に勝つには、剣では何倍も技量を必要とされる。だが、相手はゴブリン。間抜けな彼らの事、槍を使うのはただ剣よりも長い、ってだけで使っていると思う。

 今だって腰だめにして突っ込んできているだけだしね。あれなら怖くない。


 左手を前に出して得意の魔法を飛ばす。


「”石礫”!」


 三センチ位の目くらましの石がゴブリンに飛ぶ。だが、ひょいと首をひねるだけでゴブリンは避けてしまった。

 だが、それで良い。ほんの少し意識を反らし、ほんの少し重心をずらす。それだけ。

 その間に僕はゴブリンに肉薄すると剣を横薙ぎに一閃した。


 それだけで頭と胴体が分断され、どさっと胴体が地面に横たわる。当然、無くなった頭の場所に鮮血を撒き散らして。

 五年間、剣を振り続けた努力の成果だ。


 向かってきた最期の一匹はと言うと、フラウが危なげなく矢を打ち出し、ヘッドショットを決め打倒していた。

 ヘッドショットをするまでの腕は無いらしいけど、結果を見れば凄腕の暗殺者って所に落ち着くかもしれない。まぁ、本人は否定するだろうけど。


 そして、”火矢”が着弾して虫の息だった一匹とそいつに足を取られて転がった二匹、そして、首元を射られて虫の息だった一匹の合計四匹に僕が止めをさして戦闘はあっけなく終わりを迎えた。


 それにしても魔法の攻撃力はすごいね。

 ランク二の”火矢”と言えども、一撃で屠るだけの威力を備えているんだから。今回は少し威力を弱めたみたいだけど。

 僕がもっと魔法を使えていたら、楽だったのになぁ……。


 そう思いながら剣を振りゴブリンの血を払い落として鞘へと納めると安堵の溜息を漏らした。

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