-22-

 僕たちは南門を出て街道を南へ進む。次の街まではかなり距離があるので日帰りで戻れる地点まで。

 さらに言えば、僕らの歩みはかなりゆっくり。

 お互いの自己紹介は終わったけど、何が得意で何ができないかを知らないからね。

 話しながら、更に索敵しながらなのだから、ゆっくりなのは当然。

 まぁ、街からそんなに離れていないからまだ現れない筈。


 防壁の傍には畑が広がっていて、作物を一生懸命世話をしている人達が見える。

 それを守護するようにぐるぐると巡回の兵士が見回っていれば、人を忌避する魔物なら現れないだろう。


「実は僕、魔法の成長限界が低いんだ」


 剣の方が得意で、魔法は石礫を打ち出すくらいが限界だ。そう言いながら手を街道の外へと向けて石礫の魔法を使う。

 体調が整っているので、思った通りの場所へと飛んで行った。


「ん、そうなのか?魔法を使うのは慣れているようだが」


 一度見ているフラウともかく、結構な速さで飛び出した石礫にヴィリディスは納得出来ないようだった。

 だけど、嘘を付いていても仕方がない。出来ない事を出来る言っても最終的には死が待っているだけだからね。

 ゴブリン一匹くらいなら一刀のもとに屠るくらいは簡単だけど、魔法があれくらいだから慎重な行動を心がけている、とも言えるかな。


 慣れているのはいつも使っているから。剣の腕は敵と遭遇した見せるよ、と伝えた。


「なるほどね。ワタシは斥候が得意。と言うよりも、斥候として訓練を受けさせられたっていう方が正しいかな。腕力には自信があったけど、所詮女の腕力よ。さらにこの身長で、魔法もそれ程得意じゃなかった。一番は忘れてたスキルね。危険察知ってスキルを持ってるのよ」


 フラウの身長は僕よりも頭一つ分小さい。172cmの僕よりも20㎝くらい低い153cmしかない。腕力は女性にしてはあるけど、体重が無いから前衛は任せられない。そこで郊外に出るのなら、戦いよりも危険察知のスキルを生かす訓練をしろと言われたのだとか。

 それで敵より先に発見し、奇襲じみた攻撃が出来る弓と背後から接近して一撃を食らわせる短刀を腰に差しているのだそうだ。後ろからの一撃はやった事が無いらしいが。

 彼女の性格としては向いていないそうだが、能力的に見れば理にかなっている、と思いたい。


「オレは知ってるだろうが、火魔法が得意だ。ランク三の魔法を使えるが、常用しているのはランク二の魔法だけだな」


 杖を掲げながらヴィリディスがぼそりと呟いた。

 聞こえる声量ではあるが、陰気な雰囲気同様に声が小さい。もう少しはきはきと喋ってくれると印象も異なるんだけどな。

 髪で目のあたりを隠しているけど、結構美形だと思うぞ。


 おっと、話がそれたな。


 彼の火魔法はランク三まで使えると言った。

 成長限界の数字とランクの数字はほぼ一緒だから、彼の才能はかなり高いと言っても良いだろう。初級(ランク一)しか使えない僕と違って、敵を殲滅するには十分な実力を有している。


 後は、発動時間なんだが……。


「流石にここで披露するわけにはいかないから後で見せる」


 そうだろうね。

 街を出てまだそう進んでいない。

 畑も見えるし、敵も見えない。

 それに、火魔法で一番怖いのは火災だ。

 うっかりと森の中で強力な魔法を使ってしまったら、甚大な被害が出る森林火災を起こしてしまう可能性がある。

 そうすると、僕たちの命はもちろんの事、街の経済にも街道を進む人たちにも影響が出てくる。


 使うときは、周りを見て対処できるだけの魔法を使う様に心がけているのだとか。




 その他にも、”あれが出来て、これが出来ない”と各々の得意、不得意分野を話しながら街道を進んでゆくと、道を外れた少し向こうにうごめく物体を見つけるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る