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「それで……、三人パーティーとして依頼を受けようと思うんだけど……」
そう言うのはフラウ。
顎をポンポンと人差し指で弾きながら考え事をしているようだ。
だが、彼女の考えていることは何となくわかる。
僕もフラウもそうだが、ヴィリディスも荷物を背負っているのだ。
各人が何を得意にするか確認しながら何かを狩ろう、と言いたいのだと思うのだが……。
「でもね、その前に各自が出来る事を知らないといけないと思うのよね」
な。
思った通りだろう。
深く考えなくても当たり前のことだからな。
考えてみなくても、誰がどのポジションを引き受けるかは大切だ。
フラウは斥候が得意らしいから隊列の先頭。以前の仲間は彼女の後にくっついていたはず。そして、女の後ろにいるなんて耐えられないって事で突っ込んだのかもしれないからな。その経験が生きているんだろう、きっと。
「オレはその意見に賛成だ。フラウの事は分かるが、コイツの事は全く知らんからな。ランクは何だ?オレはDランクだが」
ヴィリディスは僕に冷たい視線を向けてくる。僕だって調べた限りしか知らないから当然と言えば当然かな。ヴィリディスが知りたいことは僕も知りたい事だからね。
ヴィリディスは魔法が得意と聞いたけど、どのくらいのレベルなのか分からない。
大きな魔法が得意なのか、小さな魔法を連発するのが得意なのか、それによってどのように動くのか考えなくちゃいけないからな。
そのくらいは僕も習ったよ。心構えとしてね。
練習は出来なかったけど。
「僕もDランクだ。この前上がったばかりだけどね」
「お前本当にDランクなのか?登録して余り経ってないだろう」
確かに彼の言う通り。
Dランクに上がるには本来ならもう少し掛かっても良いはず。
だけど、僕は毎日休まず依頼を受けて、しっかりと完了しているからね。失敗も無かったし。
新人たちが休んでいる時にも僕は働いてたから、その影響が強いと思うよ。
おっと、幾つか魔物を討伐したのも含まれてるね。別の依頼中にばったりと遭ってしまったから仕方なく討伐しただけ、なんだけどね。
一応、嘘は無いと冒険者カードを提示する。
真新しいカードに、FとEが打ちぬかれたカードを見れば納得するだろう。
「すごいね。ワタシの思った以上だ。ヴィリディス、どうだい?」
「いや、オレが悪かった」
驚いたのはヴィリディスだけじゃなかった。フラウも驚いた。
ちなみに、二人が驚いた事に僕も驚いた。
「それならオレからは特にないな。軽く狩れれば良いくらいかな」
コホンと一度咳ばらいをしたヴィリディスがそれとなく提案をする。
各自の得意分野を見極めるだけで、重い依頼を受ける事は無いだろうと。
その意見に僕は賛成だ。
訓練場で見せるだけでも良いけど。
そう思っていると、フラウも彼の意見に賛成だと、さらに言葉を続けた。
「じゃ、決まりね。街の外に行って適当に何か狩りましょう」
意見が纏まり行動指針が決定したことでフラウは喜びを表情に現していた。
向かうは街の外……、なんだけど、その前に冒険者ギルドの掲示板を確認に向かう。
冒険者ギルドの掲示板には、二つの種類ある。
一つは毎日冒険者がわらわらと群がる依頼を掲示してある、お仕事情報板。
仕事にありつくために毎日喧嘩になる場面があり、生傷が絶えないのはたいていこいつのせい。僕は上手くやってるから喧嘩は無いけどね。
もう一つは街の周囲の注意情報や他の街の情報、そして国からの大事なお知らせなど、依頼ではないが重要情報を記載してある、周辺情報掲示板。
今回、僕たちが利用するのは二つ目の様々な情報が記載してある掲示板の方だ。
「えっと……。ほら、やっぱりいるよ」
みんなで全ての情報を眺めて行くが最初にそれを見つけたのはフラウだった。
斥候が得意なだけあり、探している情報を真っ先に見つけるのはさすがである。
「南の街道沿いにゴブリンが出没しているそうだよ」
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