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体調は完全に回復した。
あれから一週間も経てば当然だよね。
翌日も念のためゆっくりしていたから、ってのもある。
この一週間、とまでいかなくてあの翌日、冒険者ギルドのカウンターに顔を出して係員に訓練場で会ったフラウについて尋ねてみた。同じ冒険者仲間だからと言って、情報は開示してくれないかと思った。だけどそうはならなかった。
まぁ、出身がどうとか、いくら稼いだとか、年齢とか、恋人はいるかとか、スリーサイズはどうだとか、そんなのはどんなに尋ねても無理だと先に言われた。聞くことは無かったけどね。
スリーサイズと言われたときはちょっと心が動いたのは内緒だ。が、後から考えたらそんな事は本人が話さないだろうけど。
依頼の達成率は結構良いらしい。
主に街中の依頼に関してだけどね。
それでも肉体労働や食堂のお手伝いとか、根気が必要なものは完璧だという。
ただ、街の外、討伐系になると話が異なる。それだけに絞ると成功率は半々。街中の依頼に比べると仲間と行動しているそうだが、その仲間が悪いみたいだ。
よく組む相方のヴィリディスと言う魔法が得意な冒険者と二人の時は成功率が高い。背伸びをせずに依頼を受けていると聞いた。
素行については悪い噂は聞かなかった。
相方共々。
スキル構成は教えてくれなかったが、斥候を得意としているらしい。が、女性だという理由で彼女の言葉を聞かない相手が多いらしい。あの凹凸のある艶めかしい体付きを考えればそれも納得できる。
依頼終了後に彼女をモノにしようと張りきった連中が命を落としているらしい。本当なのか判らないが。それが事実であるのなら魔性の女って事だろうけど、フラウ自身に罪はないからね。
悪い噂を聞かない相手であるのだから、僕の答えは当然……。
「で、考えてきてくれたか?」
冒険者ギルドの裏手、訓練場で待っていた僕に近づいてきたのはフラウと手に杖を持った男の冒険者。恐らく、彼がヴィリディスで間違いないだろう。
フラウの恰好は以前と変わらず革鎧を身に着けて腰に短い剣を横に差している他に、弓と矢筒を手にしている。斥候が得意と聞いたけど、なるほどと納得が行った。
そのフラウは僕の恰好を見て少し驚いていたようだった。
先日の訓練場の恰好は少し厚手の上下に普段使いの剣を差していただけだからね。
でも今日は違う。
安物とは言え革鎧をしっかりと身に着け、左右に剣を吊るした完全装備。背中にもいつでも依頼をこなせるようにバックパックを背負っている。まぁ日帰りで行ける範囲の依頼を受けられるだけの装備しか持ってないけどね。
「ああ。一応聞くが、そちらは?」
分かっているがあえて尋ねる。
間違えていたら困るからね。
一週間の間に弱みを握られ、別の男とくっつく、って事も考えられるからね。
「こっちはヴィリディス。時々依頼を受ける冒険者仲間って所だ」
「分かった。僕はコーネリアス。よろしく」
少し陰気な雰囲気を持っているが、悪だくみをするような噂を聞かなかったから大丈夫だろう。
ちょこんと頭を下げて自己紹介をする。とは言っても名前だけだけどね。
「ヴ、ヴィリディスだ」
「って事で顔合わせを終えたところで答えを聞いても良いか?」
ヴィリディスが頭をちょこんと頭を下げた。
僕と同じくらいだね、下げた位置は。
うん、大丈夫だろう、彼なら。ちょっと陰があるけどね。
後ろから”ブスッ”と行かれないとは思うけど……。
嫌だよ、後ろから刺されて死ぬなんて。
それはともかくとして、フラウは答えを急ぎすぎ。
思わず溜息が漏れてしまう。その性格も仲間を選ぶときに失敗した要因じゃないか、そう思う。
「ああ、よろしく頼むよ。僕も一人ではキツイと思う依頼に挑戦してみたいと思っていたところだからね。」
Dランクに上がった。ここまでは上がるのは比較的容易だ。サボらなければね。
Cランクに上がるには一人では完遂出来ない依頼を受ける必要が出てくる。渡りに船、ではないが、フラウとヴィリディスには大いに期待したい。
先輩として引っ張ってくれると有難いと願いつつ、すっと右手を差し出した。
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