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 グレーウルフを倒した僕は剣の汚れを拭き取り鞘に納めた。

 普段使いの剣とは言え蔑ろには出来ない。

 手入れさえしっかりとしておけば、まだまだ使えるからね。


 冒険者になって初めての戦闘に勝利した。

 手がまだブルブルと震えてる気がする。

 沢山の魔物相手だったら、ここで死んでいたかもしれない。幸運だったと思うしかないだろう。

 魔物を倒せたのは、五年間剣を振り続けた努力の結果。

 自分を褒めると共に、これからも精進して行こう。

 決して甘やかさない。

 あの、父親の泣きそうな顔を見てしまった日の二の舞にならないように!


 視線を下ろすとグレーウルフの首元からどくどくとまだ鮮血が流れている。

 魔物を倒して素材として活用するには血抜きが必要と言われてるけど、これなら必要ないだろう。

 処置としては流れた血液を土と混ぜて誤魔化すくらい、かな?


 倒れた倒木から丈夫な枝を取ってきて地面を掘り起こす。

 そして、土と混ぜて臭いを消せば終わりだ。

 冒険者ギルドにはグレーウルフと遭遇したと報告した方が良いだろう。場所が場所だけに。


 首元から血が垂れなくなったグレーウルフの亡骸を担いでキノコの群生地に戻り、採取したキノコがぱんぱんに詰まった麻袋を回収。

 僕は意気揚々とウェールの街へと凱旋するのだった。




 冒険者ギルドに到着したのは太陽が真上から少し傾いた頃だった。

 職人たちがお昼を終えた時間、そう言うと分かりやすいかな。


 グレーウルフを倒してまだ一時間くらいしかたってないから買取価格は期待できるかもしれないな。

 っと、カウンターへ依頼品を納めないとね。


「こんにちは~」

「おう、あんちゃん。今日は早かったな」


 番号の書かれていないカウンター。依頼の完了報告だけなら番号のカウンターに並ぶべきだが、今日は納品がある。その為のカウンターだ。

 カウンターにはがっしりとした体躯の持ち主がいる。

 名前はちょっとわからないな。でも相手は僕を知っているみたいだ。不公平?


「コーネリアスだ。依頼品の納品と森で狩ったコイツを買い取って欲しい」

「依頼品とグレーウルフか……。オイーシキノコは結構量があるしグレーウルフも首を一刀か……。新人にしてはやるな」


 僕の冒険者カードを一瞥し手から依頼品とグレーウルフを調べている。

 真新しい冒険者カードで最近登録って分かるのかな?

 オイーシキノコは十分な量を納品できたみたいだ。

 そして、グレーウルフも彼を唸らせるだけの品質らしい。


「まだ温かいな。倒してそれほどでも無いな」

「キノコの群生地で襲われたところを返り討ちにした。でも、俊敏性が自慢のグレーウルフのはずがそいつは足が遅かった。何故かわからないが」

「不思議な事もあるもんだな……。それはともかく、キノコの群生地に現れたことは周知しておくことにする。情報感謝する」


 そう言われながら冒険者カードを返され、依頼品とグレーウルフの買い取りの金額を渡された。

 金額は街中で肉体労働をした数倍も貰えた。高級キノコと解体していないとは言えグレーウルフ丸ごとだからね。駆け出しにしてはあぶく銭ともいえるほどのお金が手に入ったのは大きい。

 宿のグレードを落とさずに済んだと喜ぶとしよう。




 だけど、あのグレーウルフはちょっと気になる。


 確かにあの森はグレーウルフがたびたび目撃されると聞く。生息地だから当然だ。

 でもあの場所で目撃される事は少ない……はずだ。しかも、一頭だけで行動していたのも不思議だ。

 狼は群れで行動し、群れで狩りをする筈なんだけどな。

 あのやつれ具合が原因なのか、それとも鈍い動きが原因なのか。僕は研究者じゃないからそれ以上考えても無駄だろう。


 とりあえず、簡単に調べてみてもいいかもしれないな。

 そう思うと遅い昼食を食べに街へと一度戻る。

 腹が満腹を訴えたあと、冒険者ギルドへと戻り建物奥、資料室へと向かうのだった。

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