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50cm角の麻袋一杯にオイーシキノコを詰め込んで、さぁ帰るぞと立ち上がった時、なぞってきた獣道の方からガサゴソと音が聞こえた。
人ならばすでに見えている筈だ。だけど見えないってことは背の低い生き物。四つ足の魔物と思う。街道(?)から逸れて森に入り込んだから魔物と出会わない、そんな事は無いからな。
担ごうとした麻袋をゆっくりと手放し、普段使いの剣を抜き放つ。
ちなみに、左の腰には兄から餞別でもらった剣を、右の腰には普段使いの剣を吊るしている。左にまとめてでも良いんだけど、何となく身体のバランスが崩れるから左右に吊るすことにした。
二本持ってるのは何となく。兄からの餞別の剣だけでいいのかもしれないけどね。何かあるといけないから。良い剣過ぎると訓練にもならないから仕方ないと思って。
ガサゴソと草の音が徐々に近づく。視線でも草の上に顔を出したグレーの毛皮が近づいてくるのが分かった。あの体躯は狼の物、魔物だ。
現れるのが分かってても、姿を見せるまの数秒間は何分にも感じるほどに長い。
冒険者になって初めての戦闘、そう思うと乾いた喉にごくりと唾を飲み込んで気を紛らわす。
そして、魔物が現れた。
しかも一匹だけ。
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名称:グレーウルフ
価格:毛皮くらいしか使うところは無い。そこまで高価ではないが駆け出しには良い収入となるだろう
説明:俊敏さが自慢の森の掃除屋。素早く動かれてかく乱されずに乗り切れ!
群れに当たったら逃げ出そう。
一人では勝ち目がない
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図鑑で見たグレーウルフと一緒だ。
鑑定でもそう出た。
俊敏さが売りで説明の通りだ。
人と対峙した時には素早い動きで翻弄しながら人を追いつめる、らしい。
戦った事が無いからね。
そして、グレーウルフは先手必勝とばかりに僕に飛び掛かってきた?
そう、飛び掛かったきた?
あれ?
飛び掛かって来たんだよな?
余裕をもって、簡単に躱すことができた。
グレーウルフって、”かく乱する”ってあるくらいに脚力自慢じゃなかったっけ?
ちょっと拍子抜け。
よく見ると飛び掛かってきたグレーウルフは何処かやつれている様な気がする。毛皮も薄汚れて痩せこけて、十分に餌を食べてない、そんな感じに見える。
それに数頭の群れで生活するんじゃないのか?それなら餌を分けてもらえると思うんだけど?
僕の中で疑問が疑問を呼ぶ。
「おっと!危ない」
再びグレーウルフが飛び掛かってきた。
考え事をしていたら危ないな……。
でもやっぱり可笑しい。
いくらやつれているとは言え、俊敏さを誇るグレーウルフ。余りにも鈍すぎないか?
ジャンプする高さはソコソコだけど、飛距離に関しては目に余る。もっと遠くから飛び込んでこないか?
これ以上観察を続けていてもらちが明かない。逃げてしまうのも手だけど、コイツ、追い掛けてくるだろうな。
反撃しない僕Xやつれていて餌が欲しいアイツ=?。
この数式なら誰でも同じ答えを導き出すだろう、グレーウルフがどうしたいか。
「ただ、ここでは倒せない」
ここはまだキノコの群生地。まだまだ沢山のキノコが採取できる。
暴れられてこの場所をダメに出来ない。
そう思うと、グレーウルフを牽制しながら獣道に入り込む。
ノロノロのアイツよりも僕の方が足が速かったから獣道に誘い込むのも簡単だった。
ホントはこんなに簡単に行かない筈なんだけど。
「このあたりか?」
キノコの群生地から少し離れた場所で獣道から数歩、脇に逸れると身体を反転させてグレーウルフに剣の切っ先を向ける。
上手く倒せれば買い取ってくれるかもしれないからね。
チャンスは次に飛び込んできたとき。
やるぞ!
グレーウルフは僕がこれ以上逃げないと見たのか助走をつけて飛び込んでくる。
飛距離は無いけど高さは十分。狙いはグレーウルフの首元。
食べるものが無くてやつれて可愛そうと思うが、僕もむざむざ殺されるわけにはいかない。判断力が落ちたのが運のツキだ。
剣を切り上げて喉元を一刀のもとに切り裂く。
首の骨まで刃が入れば魔物と言えども生きている筈も無い。
グレーウルフは地面に投げ出されると同時に首元から大量の血液を噴出。
手足をぴくぴくさせて、最期の命を燃やしていた。
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