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冒険者ギルドに入った僕はキョロキョロと辺りを見渡した。
朝早い事もあり、人でごった返していた。入り口付近は比較的人が少ないが、とある場所は足の踏み場もないくらいにギュウギュウに混雑している。この時間だけなのか、落差が激しい。
それとは別に順序良く何列にも並んでいるカウンターが見える。
天井から吊るされた看板には番号が記され、1から4が非常に混んでいる。5、6は数人が並んでいるだけだった。
よくよく見ると、5、6は看板の下部に”その他”とあるったので役割が異なるのだろうと予想してみる。
冒険者ギルドのルールは何となく聞いていたが、カウンターの数字が何を示しているのかは僕は知らない。
とりあえず、冒険者として活動するには登録が必要なので空いているカウンターに並んでみる事にした。
性別はともかく、年齢は同じくらいだったので同じように登録に来ているのだろう。
昨日が成人の儀を行う日だったから、僕と同じように宿に泊まり、朝一で駆けつけた、そんなところだろう。
ま、僕もその一人だけどね。
その列なんだけど、思うように進まなかった。
数人しか並んでなかったけど当然だよね。
だって、冒険者として登録するんだよ。いくら係員が優秀だって時間は掛かるさ。
そして、僕の順番が回ってきた。たっぷり三十分は掛かっていただろう。
一人十分弱の計算かな?
「初めてですね。何かお困りごとを依頼に来ましたか?」
この番号のカウンターは”その他”、つまり様々な事を受ける場所らしい。登録はもちろんの事、仕事を受け付ける、そんな事もしているようだ。
だけど僕は冒険者として働く為に登録したいんだ。でも何で、困り事なんて聞かれたのだろうか?
「いや、冒険者として登録をお願いしたい」
「これは失礼しました。身なりからして貴族様がいらっしゃったかと思いましたので」
男爵家の三男だからと言って特別な恰好をしている訳ではない。街中になじむ様なごく普通の恰好をしている。特注品じゃなく、中古品を着ているし……。
あ、この剣か!
疑問はそこで氷解した。
確かに腰の一本は兄から餞別として貰った業物だけど、ボロボロの剣と一緒にぶら下げてるから貴族とは思われないと思ったが……。ちょっと考えよう。
「ではこちらにお名前と必要事項を記入してください。あと、スキルカードの提示をお願いします」
「わかった」
一枚の用紙にすらすらと記入して行く。
名前は当然、コーネリアスのみ。家名は書けないからね。
追放されたのに家名を記すなんてうっかりとしちゃいそうだけど。
「これでいいかな?」
記入した用紙とスキルカードを係員に渡す。
一瞬驚きに似た表情を見せていた。が、何故そんな表情をしたかはだいたい分かる。
家名のところが黒く塗りつぶされているんだから。
それしかない。
その他にもスキルが土と一番使えない魔法でありながら、成長限界が1しかないんだからね。冒険者になって役に立つのかと疑問視されるのも当然かな。
でも、五年間頑張って来たんだ。最低限の実力はあると思いたい。
係員が用紙とスキルカードを持ってカウンターから姿を消し、少しの時間の後、スキルカードと同じ大きさのカードを持って来た。
「こちら登録を証明するカードになります。無くしたりしないようにしてください」
「わかった」
ルールとしては無くしてしまったら再発行が面倒なのだ。
ギルドで相互に情報をやり取りしているので、再発行は可能なのだが、調べるのに時間が掛かる。発行した場所とか、今のランクとかを調べるのに。
ずっと発行した場所にいればお金を払うだけで簡単に再発行できるんだけどね。
受け取った冒険者カードはAからFの文字が打刻されていて、Fの場所に穴があけられている。僕のランクは今、Eランクとして登録された。まぁ、駆け出しって所だ。
その他には僕の名前が刻印されているだけ。
シンプルなカードだ。無くしたりしないようにしっかりとしまっておかないとね。
「冒険者ギルドに登録すると説明をしていますが、聞きますか?」
どんな組織にも最低限守るべきルールがある。当然、冒険者ギルドにも。
だけど、登録するにあたって最低限のルールは調べたつもりだ。
だから今回は断ることにした。
「分かっているとして説明を省きます。最低限の規則が書いてありますので、復習の意味で読んでおいてください」
そう言うとカウンターの下から沢山の文字が記載されている用紙を取り出し、僕に渡してきた。
知っている規則と違う可能性があるから有難く受け取っておいた。
一応ね。
念のため。
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