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2021/9/24 スキルカードにミスがあったので修正。
「僕のスキル……。何で?」
受け取ったその場で僕は崩れ落ちた。
「そこに居ないで立ち去りなさい。次の子供の邪魔になりますよ」
そう言われても足が動かない。
助手の司教に抱えられながら僕はその場から離され、端にあった椅子に座らされた。
それでも僕は信じられないと立ち直ることが出来なかった。
「息子よ、どうしたのだ?」
僕の様子を心配した父上が声を掛けてきた。
そこでスキルカードをゆっくりと手渡す。
するとその酷い内容に、父上は真っ青になっていた。
そのスキルカードがこれだ。
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名前:コーネリアス=フォースター
教会:ウェール教会
スキル:
土(1)
その他スキル:鑑定(▲1)
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コーネリアス=フォースターは僕の名前。
父上であるフォースター男爵の三男だ。そこは書かれていない。
ウェール教会はこの祝福の儀を執り行った場所。
そして、スキル。
これが問題だった。
父上もそうなのだが、フォースター家は代々火の魔法を得意としている。父も一番上の兄も一つ上の兄も、そしてお爺ちゃんも、ひいお爺ちゃんもそうだった。
最低でも成長限界の3を持っていた。筈なのに……。
僕のスキルはそれとは一切関係ない土のスキル。
しかも、成長限界が1。
こんな仕打ち、あんまりじゃないか!
神は居ないのだろうか?
そう思うしかない。
スキルカードを父上からそっと取り返すと祝福の儀を行っている司教へふらふらと近づく。
そして……。
「司教!もう一度やり直してください!」
そう言ってしまった。
祝福の儀は一生に一度。王国貴族であっても平民であっても変わらない。
だけど、僕は納得が行かないのだからやり直しを懇願した。
「それは出来ません。それは神が与えた祝福。それを信じられないのなら神より罰が下りますよ」
そう言うのは、僕を抱えて連れて行った助手の司教。
僕は男爵家の三男。どんなに頑張っても男爵家を継ぐことは無理だし、親の威光をあてにもできない。何を当てにすればいいかと考えると残ったのはスキルしかなかった。
男爵家や子爵家の三男、四男など、家を告げぬ子供たちが最期に行きつくのは冒険者。
魔物を狩りその日の糧を受け取る職に就くしか残っていない。
その冒険者で役に立つのがスキルなのだが、成長限界1だと何の役にも立たない。
石ころ一つ生み出せたり、ちょっとした土の盛り上がりを作れるだけ。それじゃ、ダメなんだ。
火とは言わない。もっと成長限界の高いスキルを貰わなくちゃ、この先生きていけない……。
「お願いします。もう一度受けさせてください」
助手の司教に泣きながら
だけど、助手の司教は僕を強引に引きはがして投げ捨てる。
「ダメだって言ってるだろう。それともなんだ?神に逆らうというのか!身体で思い知らせてやろうか」
僕を見ながら右手を高く掲げる素振りを見せる。あの腕が高く上がった時、教会騎士団がここになだれ込み、僕を連れ去ってしまうのだろう。たぶん、何処かで殺される運命に……。
そう思っていると、僕の目の前に誰かが立ちはだかった。
「司教、今日はこれで怒りを静めてください」
司教に近づいたのは僕の父上だった。
掲げようとした腕を掴み、何かを握らせている。
司教はそれが何なのか瞬時に理解をすると再び声を高らかに上げた。
「いい心がけだ。今日は彼の行動により一人の子供が許された」
ニヤニヤと気持ち悪い笑みを僕に向けながらそう言い放ったのだ。
何とも不甲斐ない結果に僕は涙を流さずにいられなかった。
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