第1部

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※目に止めて、読んでいただきありがとうございます。

 PV的にプロローグを飛ばしてしまったって方がいらっしゃるようですが、物語の流れみたいなものが書いてありますのでプロローグは是非、目を通してから読んでいただけるとありがたいです。(2021/9/29)

  




    ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ガラガラと音を立てて馬車が街道を進む。

 王国の東の外れ、辺境伯の治める街から馬車で一日の距離にある街、ウェールへと間もなく到着する。


 辺境伯が治める街ならさぞ栄えていると思うだろう。

 確かに人口は辺境伯の治める街の方が多い。

 辺境に位置し、魔物が跳梁跋扈する森にほど近いとなれば兵士の数も膨大になるのでそれ故と考えても良いだろう。

 だが、中央の王都に近く商人の街として知られるウェールの街は活気に満ち溢れていると言わざるを得ない。


 国に数人しかいない祝福の儀を執り行える司教は活気に満ち溢れた街にしか居ないのだから仕方がない。

 そう、僕は今、祝福の儀を受けるためにウェールの街へと向かっている最中なのだ。


「父上、間もなく到着ですね」

「疲れていないか、大丈夫か?」

「はい、疲れてなんかいません」


 そんな親子の会話を楽しんでいると西の空へ太陽が沈む前に馬車はウェールの街へと滑り込んだ。


「明日は早くから教会へ行かなくてはならない。はやる気持ちを押さえてしっかりと休むのだぞ」

「はい、父上!」


 そんな会話をしながら宿へと向かい、明日に備えてベッドに入るのだった。







 翌朝は絶好の祝福の儀日和。

 窓から見える空は蒼天とも言える色。

 まるで僕を空が祝福しているみたいだった。

 着替えて朝食を取り、父上と一緒に教会へと向かう。


 父上は辺境伯に仕える男爵です。僕はその三男。

 ずっと昔から剣豪の生まれる家系みたいで、父上もその血を引いているのか辺境伯領一の腕前と評判だ。

 そんな父上と一緒でも宿から教会までは徒歩で移動しなくてはいけない。

 尤も宿から目と鼻の先が教会なんだけどね。


「ここが教会かぁ~」


 僕がそびえたつ教会に目を奪われた。

 なんて大きな建物なんだろう、と。

 辺境伯の居城よりも高いのではないか、そう思うのです。


「ほら、邪魔になるから行くぞ」


 目を奪われていたことで足が止まっていたみたいで、父上に注意されてしまった。

 失敗失敗。

 礼拝堂に入ると正面には色とりどりのガラスがはめ込まれたステンドグラスが見える。もし、そこから太陽の光が入っていたら、思わず拝んでしまいそうだ。


 ステンドグラスから下に視線を向ければ教壇に数人の司教が見える。

 あの司教たちが祝福の儀を行っている。

 沢山の子供たちが列を成しているから一目でわかった。


「では父上、行ってきます」


 父上に挨拶をして祝福の儀を受ける子供たちの列に並ぶ。

 王族だろうが、貴族だろうが、例外は無い。

 神の前に皆が平等なのだから。


 暫くして僕の順番が回ってきた。

 一生に一度の祝福の儀、心臓がドキドキと鳴っている。司教にこの音が届いてしまうのではないかと思うくらいに。


「楽にしていなさい」

「はい……」


 ドキドキを押さえつけるように、深呼吸して落ち着ける。

 うん。準備は出来た。


 司教が僕の頭に手を置き何か文言を唱えた。

 見ていた子供たちと同じように僕の体が光り輝いている。

 それが数秒続くとスッとおさまり、元の光景が目に入った。


「これで祝福の儀は終了です。スキルカードを受け取りなさい」


 祝福の儀を終えるとスキルカードを受け取ることになる。そこに僕のスキル、つまりはどんな魔法が使えるか、書かれているんだ。

 わくわくしながらスキルカードを受け取る僕。

 それを見た僕は奈落の底に落とされた、そんな気分になってしまった。

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