詩「流れる雲のように」
有原野分
流れる雲のように
悲しみの青空に
また一つ歳を重ねて
明日の朝日に
胸を踊らせる
夢の中では
雨が降って
間接照明が
滲んでいった
(ぼくは空を飛びながら
無我夢中で体を透明にするのです)
「山が燃えている
その麓に
あなたのお墓があって
今年のお彼岸には
間に合いそうもないから
私はあなたを思い浮かべて
手作りのおはぎでも食べようかしら」
北向きの鏡に
あなたの好きだった
洋酒が反射して
琥珀色の光が
部屋に広がった
今でもたまに見るのは
防空壕で怯えていた
幼馴染の横顔なのです
ギターの弦が揺れた
あなたの声が聞こえてくる
ぶつかり合うコタツの角と
足先の冷たい感触
その上に響く歌があって
その上に灯る光があって
朝日が世界を赤く染める度に
夜が部屋を満たしていく度に
私は今でも
あなたの帰りを待っています。
詩「流れる雲のように」 有原野分 @yujiarihara
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