無幻

名無し始めよう。

名無し無幻の裡に藏ぶれば、体軀の咲く阿鼻叫喚が五月蠅く、夕闇の中に、死体が咲いた。暗い肩に触れたら、一度きり枯れ葉の裡に、竜巻の魔法使いがおずおずと飛んだ、俄然風ガタガタと不覚を蜻蛉と名付けた。火災の甲羅、加盟された同盟の泣き虫は本を読んだ。暗号を渡した彼の身に付けていた外国製の貝の飾りは大勢が嫉妬した。軽く頬を打った。切れ味の乗る言葉が、闇夜の使い魔と魅了した鬼女が、曇り顔を化粧したかに見えた。蠍座の妖魔が、雲を連れて来た。雲の上の夕暮れは小刀を脇差しに挟んだまま、軽く殴打した。

名無し抱くイタズラの派閥は真夏の飾り障子に猫が言った。マッチをくれ。煙草を吸いたい。

名無し風が揺れた夜型の妖魔が、泣き虫の為に窓を開ける。夕暮れ、風、夕闇。枯れ葉に貝。思い出すのは、ハーレムの建築を思ったあの室内で、文章を読めば、幽霊が嗤う。それは霊能者と行動する女の子だった気がする。空をみろ。自由を得た鳥たちの羽音がする。その鳥たちの羽がハラリと唄えば、徐ろに羽を拾おう。そのポケットに羽が在る少年を、少女は幾年間探したろう。それが、人類史に多大な影響を与えた霊能者やぬの墓標に見えた名実の栄えた小説家が、世界中にやがて知らしめようとした少女の名を、私は忘れた。私は肉体の奴隷や囚人なんかではないが、肉体を奪われれば、名を語る破廉恥な輩を別の牢獄に閉じ込めよう。

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