SLと高校生

 P村は駅から少し離れている。田舎なので。

 ただ、P村の谷の上を線路が走っている。R町からQ町の方向に向かって、少し上り坂のようになっている。

 50~60年ほど前、まだSLが走って居た頃は、その上り坂ではSLが少し遅くなっていたそうな。


 そこで、P村の高校生たちは考えた。

『これ、飛び乗れるのでは?』


 何しろ駅に向かうとそれはそれで遠回りだし、そもそも駅から乗らなければタダだ(※犯罪ですし危険です)。

 線路の近くまでやぶをかき分けて向かい、やぶの中に潜む。やがて遠くから汽笛と動輪の音がする。だんだん音が大きくなる。

『やるぞ』

『やろう』

 高校生たちが飛び出そうとしたそのとき、突然脚が動かなくなった。

「なんだわざとやってるのか」

「違えよ。お前こそどうなんだよ」

 脚が動かないうちにSLは学生の前を悠々と通り過ぎていく。


 こんなことが数度のチャレンジの内に、数度とも起きた。


 彼らのうちの一人は、の家の息子だった。話を聞いた草分けの当主は、事もなげに言った。

「ああ、それは――が止めたな」

「なんでさ」

「そりゃあな、ほむら様は『火を穢される』ことを嫌われるからな。蒸気機関車の釜だって、ほむら様から見れば『炉』のひとつ、御自分の領分なんだろうよ」


 ※ ※ ※


「って前回は前回で目の前で『火を消して』も何も起きなかったって話なんだろ? 何を以て『火が穢される』というのか謎なんだが?」

「まあ、神様視点の判断なので……」

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