いわお様のこと #2

 の祀られる大岩が侍たちに持ち去られ、谷川の底に消えて、数週間が過ぎた。

 ――ある夜、村長むらおさの枕元にが現れた。

『間もなく岩の災いがある。村人を連れてやしろに行け。そこは岩の災いを免れるであろうから』

 飛び起きた村長はこのことを直ちにたちに告げた。草分けたちは手分けして村人を叩き起こし、のわき様の御社おやしろに向かった。

 やがて、地響きがした。

 暫くの間地面が強く揺れ続けた。それが止むと、今度は山の方から土の匂いが強くただよい、轟音がした。

 地震と、それによって引き起こされた山崩れである。

 全てが終わって後、村人が村に戻ると、大岩のあった辺りから山が崩れ、田畑もどこが境か分からないほどに乱れてしまっていた。家も多くは傾き或いは土に埋もれてしまっており、無事なのは御社くらいのものであった。

 ――それでも、村人たちは、『いわお様がわしらの命だけは助けてくださった』と言い合った。


 さて、その頃殿様は、というと。

 地震は殿様の城と城下町も直撃した。城下町は泥の中に沈み、殿様の居る御殿も潰れ、殿様御自身も潰されて亡くなったという。

 確かに、岩の災いが起きたのだ。


 ※ ※ ※


「いや、泥に沈むというか、液状化現象でしょ」

「城、海沿いなんで物理的にはその解釈でいいと思うんですが、それより祟りの方をですね」

「っていうか虹色の蛇とか何よ。居ないでしょそんな生き物」

んですってば」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る