いわお様のこと #1

 は山や森、石、土の神様で、蛇はその使いだとされている。P村では、蛇を殺すことはなるべく避けている。中でも、白い蛇やなど、珍しい色の蛇はいわお様そのもののようにたてまつられる。


 ※ ※ ※


 昔々、今で言うO市にいた殿様が、P村のおさに命じた。

『城をきずく。村の裏山にある大岩を差し出せ。岩の姿のまま切り出して谷川まで降ろせば、後はさむらいたちにやらせる』

 殿様はどうして大岩があると知っているのか。何代か前の殿様が鷹狩りに来た折に見知っていたのかもしれない。

「しかしこれは困った。あの大岩は、いわお様の宿るところ。切り出して何もないものかどうか」

かく、おうかがいを立てるしかあるまい」

 大岩の前に村長と神主、たちが集まり、祝詞のりとを唱えた。すると果たして、虹色の蛇が現れた。

『壊すことならぬ。岩を動かす者は岩に死すであろう』

 そうお告げがあったのだという。

 そのままの言葉を村長は恐る恐る殿様に申し出た。殿様はさすがに怒りをあらわにはしなかったが、しかし受けれはしなかった。

「お前たちがやらぬなら、もういい。我々がやる」

 侍たちが村に押し入り、大岩にくさびを打ち込み、岩の姿のまま切り出した。木を切り田畑を壊して谷川まで無理矢理道を通し、に乗せて動かした。

 ――その間、。普通の青大将すら、村で見かけることは無かった。

「ほれみろ、蛇のたたりなど無いではないか」

 侍たちとその部下の余所者よそものたちは軽口をたたきながら仕事をした。

 大岩は侍たちの用意したいかだに乗せられ、綱で岸から引くようにして運ばれる。ところが、谷川は村人でも足を踏み外せば沈んで帰られぬ場所。慣れない余所者の一人が足を踏み外し、川に落ち、しかし沈むまいと筏を引く綱をつかんだまま暴れたので――筏は傾き、あっという間に大岩は谷川の底に消えた。余所者と諸共もろともに。

 やはり、いわお様はお怒りだったのだ。

 そう村人は噂し合ったが、これで終わりではなかった。


 ※ ※ ※


「いわお様って、あの、西●ラ●●●ズの、神様仏様――っていう」

「それは稲●様です」

「というか、終わりではなかったって、何」

「次回に続きます」

「次回て」

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