第2話 転移(夜明渉の場合)

~主人公の視点で送りしています~


俺の名前は夜明渉よあけわたる。33歳。独身。

高校卒業後、ある都市のバス運転手をして15年勤務している。

今日は台風が近づいていつもなら運休しているのだが、上司から竜神町にある大学の推薦入試がある事なので臨時運転をする事になって8時から運転をしていた。

今乗っている乗客は20人でその内10人は入試に行く高校生であった。


「次は竜神町。竜神町です。○○大学には此処で降りて下さい」


俺は次の停車場の案内を行い運転していると、雷がバスに命中した。


そうしたら.....俺が運転していたバスが消えてしまったのだ......。


「うう.....ここは?」


俺が目が覚めると周りには真っ白な空間しか見えない。


『ここは何処なの?』


『おい。運転手! 此処は何処だ!』


バス内ではお客がパニックになって騒いでいた。


「すいません。今から確認しますので此処で待って下さい」

俺はお客にそう言ってバスから降りて外に出た。


「本当に何もない.....」

そう思った時、何処からとなく女性の声が聞こえてきた。


『ようこそいらっしゃいました。皆様降りて頂きませんか?』

女性の声はバスから降りて欲しいと言ったので、乗客全員がバスから降りて行く。

すると、目の前に5人程の女性が立っていて、その一人の女性が前に出てその場にいた全員に話かけるのであった。


『皆様は、私達『神』によって召喚されました。貴方達には私達の願いを聞いて欲しいのです』


そこへ一人の中年男性が女性に尋ねる。


「おい。俺達を此処から帰してくれ。仕事に間に合わない!」


『それは.....出来ません』


「なんだって!」


「なんでよ!」


「これって.....異世界召喚なのか? 来たああ!」


色々と話す乗客達。

「神」と言った女性が淡々と話し始める。


『貴方達には「ヒストリア」と言う世界ではびこる魔王を倒して欲しいのです。魔王を倒した時は元の世界に戻しましょう』


「それは本当か?」


『本当です』


「わしは....もう80歳なのだが、戦えないぞ?」


『それは問題ありません。貴方には若い頃の姿になって転移させましょう。この方と同じ歳の方は若い頃に戻って転移させますのでご安心下さい』


それを聞いた乗客全員は喜んで騒いだ。


『私はこの女神達の代表で名前はアンドロメダと言います。私が持っている水晶玉に触れて下さい。この水晶は能力を見て『ヒストリア』の世界の何処かに転移させるのかを判断させていただきます。転移先は私の他、ここにいる5人の女神が転移しますので、そこで加護を貰ってから転移先に転移させますので良いですか?』


アンドロメダが持っていた水晶玉を乗客達は次々と触って行き、転移先を決めて行き、他の女神の所に乗客は歩いて行った。


『貴方達は、私が転移します。一人だけ違う女神に行ってもらいます』

アンドロメダが男子1名と女子4名の高校生に話をすると一人の女子高校生が質問した。


「すいません。この子も一緒に私達と転移させていただきたいのですか」


『どうしてですか?』


「この子は私達に取ってなのです。一人だけでは無理です!」


『そうですね.....分かりました。それではその子を先に指定の女神に行って加護を貰って下さいね。その後、私の所に戻って来て下さい』


「ありがとうございます」

そう言って高校生達は一人だけ違う女神の所に行った。

5分程でアンドロメダの所に戻って来て返事をした。


「女神アンドロメダ様。終わりました」


『それでは貴方達に加護を与えますね』

アンドロメダは高校生達に加護を与えた後、転移させたのであった。


その後、次々と女神達によって転移して、最後に俺が残った。


『次は貴方ですね。この水晶玉に手を触れて下さい』

俺は水晶玉に手を触れたが、アンドロメダの顔色が悪くなった。


「どうですか?」


『.....貴方には全くって言うほど能力がありません.....。他の人は何か一つは特別な能力があるのに....。まあ、いいでしょう。貴方にはそこにいる女性で十分でしょう』


アンドロメダが指さした所には薄汚れた体育座りをしていた女性がいた。

俺はその女性の所に向って行く。


「すいません」


『はい.....』


「話をしていた女性から貴方の所に行きなさいと言われたのですか?」


『そうですか.....』


「どうかしましたか?」


『いいえ.....』


(この女性、何処かで見た事がある...まさかな....)

渉はそう思って女性と話をする。


「すいません。俺は夜明渉よあけわたると言います。貴方のお名前は?」


『私の名前は......フローネ』


(フローネって........そうだ......思い出した。俺をだ。しかも、「ヒストリア」って俺が......)


「フローネさん。教えていただきませんか? 俺達が『ヒストリア』にいる魔王を倒す理由を」

渉はフローネに魔王を倒す理由を聞くと、フローネは淡々と答える。


『実は、『ヒストリア』は私が作った世界で、15年前に勇者召喚をして大魔王を倒したのですが、何故か別の世界から魔王達がこの『ヒストリア』を壊滅しようとしているのです。しかし、先の勇者召喚をした為、今の私には再び召喚する事が出来なくて....それでアンドロメダの援助を受けて加護だけ与えるようにしたのです.....』


「そうなのですね。俺でよければ行きますよ?」


『本当ですか!』


「俺もさっきそのアンドロメダって方から能無しと言われたもので、貴方には何となく助けたいと思ったので。役には立てないけど、俺がんばりますから」


俺はフローネを励ました。


『今の私の力ではアンドロメダや他の女神から貴方達から言われているチート能力を与える力も....しかも、若返りも出来ないし.....』


「まあ。其処は無くても努力すればなんとかなるかも知れないし」


『ならば、私が与える能力を見て欲しい物があれば教えて下さい。私の力では3つしか能力を与えませんので....他の方なら10個は貰えて、アンドロメダなら20個も与えるのだけど....』

フローネはそう言うと、目の前に能力の一覧が出てきた。


(やっぱり、あの時の女神だったか.....この女神の加護って確か.....そうだ。あれか?)

俺は思考を張り巡って欲しい物を言った。


「では、道具箱アイテムボックスと鑑定と錬金術でお願いします」


『そんなので良いのですか?』


「はい。それでお願いします」


『分かりました。それでは頑張って下さい』


「じゃあ。行ってきます。ちゃん」

俺はフローネにそう言って転移先に行くのだった。


『フローネちゃん.....って以前にも言われた気がする.....頑張って下さい夜明渉さん』


〇〇〇〇〇

渉含む乗客全員が『ヒストリア』に消えて行った後、アンドロメダ達は笑いながら話をしていた。


『これで良いのかしら? 今回の召喚者は自分勝手な人ばかりですよね?アンドロメダ様』


『まあ。十分でしょう。私が選んだ人は特に自己欲の塊だったわ。』


『あの異次元の魔王達に勝てるのでしょうか?』


『無理ね.....絶対に』


『どうしてですの?』


『だって、『ヒストリア』では、3分の2があの魔王達が支配しているからですわ。私達の神の加護があっても今の召喚者の内、2人ぐらいしか生き残れないと思いますわ。それより、フローネ。貴方にあげた2人は特にいの一番に死ぬでしょうね? おほほほほほ』


実はアンドロメダの神達はフローネにを提案していた。

それは、アンドロメダ達の庇護を受けた人物がこの世界を統一するゲームをしていたのだ。

フローネが作った世界をゲームの場所にされていたのである。

フローネが送った人物が異世界の魔王を倒したら、フローネはそのまま『ヒストリア』を保護して、別の神が送った人物が異世界の魔王を倒したら、その神が『ヒストリア』を支配する。

もしも、全滅したらヒストリアは魔王の支配下になるゲームであった。

そこでアンドロメダは無能である渉をフローネに紹介したのである。


(元々、大魔王を倒したヒストリアは神の中でも高ランクの世界で、私にとっては邪魔で邪魔。だから、こっそり私が加護をしている世界の中で一番凶悪な魔王達をヒストリアに送ったのよ。あの魔王達がヒストリアを支配下になれば。私がヒストリアを加護してあげるわ.....フローネさんも世界は私がいただきます)


アンドロメダ達の笑い声を聞きながらフローネは嘆いていた。


(すいません。渉さん.....私達のゲームに巻き込んでしまって......でも、渉さんが言っていたって.....まさか....じゃないのかな? ああ、渉さんに腕輪を渡すのを忘れていました.....どうしよう......)


心の中にフローネは思っていたのであった。








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