第1話③

ふざけ合いながら小百合と私、その後ろから普通に会話してる透と優樹が昇降口から入り教室へと向かう。


私達4人を学年の半数は慣れっこだったりするが、陰ではやはり密かに話題になってたりする事もある。……らしい。


「また4人でいる。」

「山崎君と小百合ちゃんは付き合ってるし、やっぱり優樹君と深咲ちゃんも付き合ってるんじゃ無いの?」

「やっぱり仲良しだよねー、付き合ってるんでしょー?」

「山崎、彼女いるとか羨ましいわー」等とそんな声を良く聞く。


私と優樹に関しては断じて付き合ってたり好き合ってるとかは無い。全っっっ然無い。本当に無いのだ。


だから直接「付き合ってるんでしょー?」と聞いてきた人にはちゃんと「付き合ってないよ?友達だよ。」と否定するまでがもうテンプレみたいになってしまっている。


考え事をしながら小百合の隣を歩いていたらすぐに教室に辿り着いてしまった。


クラスが別になったのだ、ここでゆりとはサヨナラしなければいけない。


私はゆりにギュッと抱き付きながら寂しいと言う想いをありったけ込めて言った。

「ゆり〜、後で休み時間遊びに行くから浮気しないでいてね!!」


ギュッとしていた腕に少しだけ力を込めると、小百合がニッコリと笑って腕を解いてズバッと言い切った。


「みーちゃん、そのネタもう飽きた。」

「ひどっ、ゆりが冷たいよぅ。でも笑顔が可愛いよぅ。」


下を向きシクシクと泣き真似をしていると頭に重たい物が乗るような?寄っかかられる様な?感じになって私の頭の上で声が聞こえた。


「さゆちゃん、透の事よろしくね!こっちは任せて!めいっぱいイジるから♪」


……なんだろう。

語尾に音符でも付けてんじゃないかって位楽しそうな声が聞こえてきた。

てゆーか、頭の上で話されるの重いんですけど?!


「みーちゃんの事よろしくね〜」

最後に小百合がそう言い残して教室へと入っていくのか衣擦れの音がしてスカートがふわりと揺れた。


いや、頭重くて入っていく姿マトモに見えてないけどさ。見えたのスカートだけだよ。


透も教室へ入っていったらしく私の周りは一瞬だけシン…と静まり返った。


「ほら、俺らも教室入るぞ?」

言いながら頭に乗せていた?寄っかかっていた?腕を外しながらポンと軽く頭を撫でられて教室に入るように促される。


頭撫でるとか私はお子様扱いなの!?


「てゆーか、頭!重かったんだけど!」

優樹を見上げて強気に出る。

そんな私にあっけらかんと返してきた。

「チビなんだから仕方ない。」

なっ!!

「ひっど、これから伸びるもん。」


人が気にしている事を!!

これから伸びるはずなんだよ?

成長期舐めんなよー!!


「はいはい。期待しないでおくわー。」


呆れたように軽く笑い教室の中へと入っていく。


慌てて私も追いかける形で教室の中へと入った。


教室の中はもう殆どの席に座っている人や鞄を置いて友人と会話している人が多い。


席を確認する為に机に貼られた名前を見ながら自身の出席番号の机と椅子を探す。

席を見つけて鞄を置いて椅子に座り、気持ちを落ち着かせるために隣の席を見ると右は鞄だけ置いてあって誰か分からない。


じゃぁ左は……と見た所で固まってしまった。

朝イチのように変な声を出さなかった事を褒めてもらいたい。


私の視線に気付いた左隣の席の優樹が楽しそうなそして意地悪そうな笑顔で挨拶してきた。


「よろしく。」

「……まっ、え?!…ホントにぃっ?!」


私はビックリして勢い良く椅子から立ち上がり、「ははっ…」と乾いた笑いが自然に出てきた。




こうして私の花の中2生活は幕を開けたのだ。早々に席替えを所望したいです、先生!!






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