第106話 アーシーからの呼び出し


「…………ん?グループメッセージ?」


 場所を移してから配信の準備を整えているという段階で、突然一通のメッセージが送られてきた。

 それはアーシーからのもので、グループのメンバーは俺とアーシーに加えてネイカの三人だ。

 その内容は、【二人に顔を出してもらわなければならない案件ができてしまったため、帝都まで来れないか】というもの。とはいえその文章からは急いでという雰囲気は感じられず、反乱軍鎮圧に向けて出陣するまでにという感じだった。


「お兄ちゃん、読んだ?」

「ああ、読んだけど…………どうするんだ?」


 俺たちの予定では、これから帝都とは逆のアールの街へと一旦戻ることになっている。アーシーが急用だというなら帝都にすぐ行くことも可能だが、急かしていないとなると逆にどうしたものか悩むというものだ。


「んー、用事っていうのの内容によるけど、今はまだ話せないって言ってるしなあ」

「予想でもしてみるか?」

「よろしく!」


 予想などとなんとなく言ってみたが、ネイカは考える気がないのか丸投げされてしまった。

 とはいえ言い出したのは俺なので、文句を言うことも憚られる。


「まあアーシーの言い回し的には、誰かに頼まれて断り切れずに俺たちを呼び寄せなきゃいけなくなったって感じだよな。となると、一応は今ドスレクマーク領の領主としてやっているアーシーより偉いか、あって同格の人物か。上ってなると、もう皇帝かそれに連なる者くらいしかいないよな」

「じゃあ急いでいった方がいいかな?」

「かもな。アーシーが急かしてないのは、そいつのせいで無理矢理呼び寄せることになったことへのささやかな抵抗なのかもしれないし」

「ありそー」


 俺の予想に他人事のような同調をするネイカ。

 とはいえ、本当に皇帝やそれに連なる者に呼び出されているのだとしたら、話は少々面倒なことになる。


「行かなきゃいけないのは仕方ないとして…………なんか肩が凝りそうな話だな」

「だねー。皇帝が出てきちゃったらどうしよう?」

「何の話をされるかだが…………協力しろとか命令されたらどうするつもりなんだ?」

「えーやだよ。そしたら全面戦争だね」


 ネイカは、笑いながらそんな冗談を口にする。…………冗談だよな?


「んー、なんかアンケートとか取ってもいいかもね。リスナー的に帝国の話とダンジョンの話どっちの方が需要あるのかわからないし。まあ最悪帝都にもダンジョンはいっぱいあるだろうから、『プレイヤー狩り』が気になるけど最悪そっちでも…………いや、それにしてもまずは物置小屋が欲しいところかー。帝都に目指す途中に『プレイヤー狩り』に狙われたらたまらないもんね」

「それじゃあ、返信は…………五日後ってとこか?」

「そうだね。私的には帝国の話の方が気になるけど…………二人を振り回すのもアレだし」


 ネイカはそう言って姫宮イルと天音コロの方に顔を向ける。二人はこちらに気がつく様子はなく、雫と何やら話し込んでいた。

 それを見ていたネイカが、ふといたずらっ子のように笑顔を浮かべた。


「そうだ!せっかくだし、リスナーにも伏せといてドッキリイベントにしよ!もちろんあの二人にも!」

「あの二人にもって…………そもそもあの二人は同行させていいのか?」

「多分プレイヤーの私たちに興味があるって話でしょ?一応確認はするけど、大丈夫でしょ!」

「それもそうか」


 早速ネイカはその旨の返信を出した。わざわざグループメッセージで送ってきたということは俺の意向も気にしているようなので、一応俺も賛同メッセージを送っておく。

 するとすぐに了承の返事が送られてきて、姫宮イルと天音コロの二人についても問題はないとのことだった。


「よーし!それじゃあドッキリってことで!誰が出てくるのかなー!」

「いや、それも俺の予想であって、まだ誰かに呼ばれてるって決まったわけじゃ…………」


 なんて俺の言葉も聞かずに、三人の方へと駆け出していくネイカ。

 まあいいか、あいつが楽しそうで何よりだ。

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