第105話 配信 合流
一旦アールの街を目指すことにした俺たちは、マイオ村というところまでやってきていた。
マイオ村はすでにクルド帝国内で、位置的にはアリーの森から北に真っすぐ、ここから西に行けばアールの街で、東に行けば帝都ファーダリエルといったところだ。
一秒でも無駄にすまいと急いで移動してきたので、時間はまだ夕方手前といった具合だ。姫宮イルと天音コロはこのマイオ村が属する領地『リィンメルト領』の首都ポーレの街で活動していたようで、マイオ村とポーレの街はかなり近く、既に顔合わせの場所として選んだマイオ村までやってきていると聞いていた。本来は夜に顔合わせとなる予定だったが、前倒しをして今からという話も了承してもらえたようだ。なんでも、こちらの配信を確認していてくれたらしい。
「というわけで、このカフェに二人が…………あ、いた!おーい!」
『イルー』
『コロちゃんだ』
『久々に見たな』
二人に向かって手を振りながら駆け寄っていくネイカと、そんなネイカに満面の笑みでぺこりとお辞儀を返す二人。
コメントも懐かしいや待ってたといったコメントが多く、ネイカの過去の活動まで目を通してはいないが、きっとかなり仲が良く一緒に配信活動をしてきた仲間なのだろう。
「お兄ちゃんはやくー!」
そんなきゃいきゃいと盛り上がる三人を眺めながらゆっくりと歩いていると、ネイカから俺を急かす声が聞こえてきた。
俺は二人に軽く頭を下げながら、その席まで小走りで駆け寄っていく。
「はい!こちらが皆さんご存じ、イルとコロちゃんでーす!二人も配信つけてるんだよね?」
「つけてるよー!みんな、今日からしばらくネイカさんと一緒に活動していきまーす!」
「ダンジョンにも反乱軍戦にもついていきますわよ!あと、こちらがネイカのお兄様ですわ!」
「ん?ああ、ネイカの兄です」
『マジ?』
『いいね』
『そこまでついてくるんか』
それは俺も聞いていない話だったので、正直驚きを隠せなかった。いきなり二人にカメラを向けられたので挨拶をしておいたのだが、これでよかったのだろうか?俺からは二人の配信のコメントが見えないので、少し不安が残る。
しかしネイカはしっかりと裏で話を合わせていたようで、二人に変わり三人の視聴者全員に向けた今回の企画の説明を始めた。
「というわけで、恒例の『ネイカとリグレ』の企画SFO編!もちろんこの人にも来てもらってるよ!」
『うおおおおお』
『マジか』
『しずくちゃん⁉』
ネイカの言葉により、一層盛り上がるコメント欄。
リグレというのは、たしか姫宮イルと天音コロのコンビ名の略称だったはずだ。自分で調べたというよりはネイカから二人の説明を受けた時にネイカが口にしていただけなので、正式名称までは認識していない。
そして若干コメントにネタバレされつつも「この人」というのは誰なんだとネイカの指し示す方を見ると、そこにはギルドの顔合わせの時にも居た雨野さん────SHZKがいた。
「皆さんお久しぶりです。SHZKと申します」
「はい!雫ちゃんには今回もカメラを担当してもらいます!ただ今回は雫ちゃんにもデスしちゃう可能性があるから、雫ちゃんがデスしちゃった時は各々の配信に切り替えって感じかな?あ、配信は新しくSFO用にチャンネルを作ったから、そっちで行います!」
『わかった』
『わざわざ作ったん?』
『もしかしてギルドの?』
「お、鋭い人もいるね!その通り今回私が作ろうと思ってるSFOでのギルドの企画用のチャンネルで、今後はコラボとかいろんな企画をそっちでやってくことになると思うから、登録よろしくねー!あ、今からSNSの方で宣伝するのと、この配信の概要欄にリンク貼っとくから!」
「ウチらも今から貼りまーす」
『つまり二人は参加確定か』
『コラボかー』
『ネイカ視点ほしいよ;;』
コラボということでみんな盛り上がるものかと思いきや、そんなコメントもちらほらと流れてくる。
しかしネイカはそんなコメントに対して、心配するなという言葉を送った。
「あ、二人はやらないらしいけど、私はこのチャンネルで私視点の垂れ流しもするから!そっちのコメントは見れないけど、私視点が見たい人はそっちで見てね!二人も一応撮影の準備はしておくんだっけ?」
「そうですわね、何かありましたら後々動画で出しますわ!」
『神』
『むしろなぜ今までがなかったのか』
「今まではちょっと色々面倒な話が…………まあそれはどうでもいいとして、今回はちょっと後で自分視点を見返すかもしれないからどうしても残しておきたくてね」
『なるほど』
『?』
『反省用か』
自分の視点を見返して反省って、このゲームに真面目過ぎるだろ…………などと他人事に思いつつ、俺たちは自分たちの配信を一度切り上げてから、コラボ配信へと向けた準備を始めた。
準備といっても、リスナーをチャンネルへと誘導してから、村の外まで移動して雫の持つカメラに顔を向けるだけだが。
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