第101話 配信 二度目


「まずいな。あのHPだと後二発ってところ…………か?」


『ん?』

『あれ』


『ブレイブアタック』のクールタイムを待ちながら、障壁の人の奮闘を見守ることしかできなかった俺。祈るようにその様子を見ていると、突然ジャイアントタイラントワームの動きに変化が訪れた。


「あれは…………モグラか!」

「障壁の人!退避して!」


『モグラ二段目?』

『やばくね?』


 再びモグラが出現したことにより、場内に不穏な空気が漂い始める。

 タンク組を分けてモグラの足止めか?などと考えながらタンク組の方を振り向くと、彼らもまたこちらに向かって走ってきていた。そしてその中の一人から、声が上がる。


「すみません!モグラ倒しきったら再召喚されちゃいました!」

「倒しきったの⁉いや、むしろナイスだよ!」


『よく倒せたな』

『火力スキルも持ってるやつがいたんか』

『まあレベル差だろ』


 たしかに、レベルの高いタンク役が居れば火力も出せるだろう。それに、SFOではプレイングスキルさえあれば敵の攻撃を回避できるので、火力と耐久を両立しながら、回避重視でタンク役を務めるということもできる。無論パーティープレイならタンク役は耐久、アタッカーは火力に振り切った方が強いのは言うまでもないが、そういったプレイをしている人たちばかりでもないだろう。

 それに、ネイカの言った通り結果的にはタンク組の行動が障壁の人を救ったので、俺たちのミスをカバーしてくれたということにもなる。一応デスの危険はありということでそういった準備で挑むようにとは声を掛けているが、やはり配信的にも誰にもデスはしてほしくないので、タンク組には感謝しかない。


「タンク組はそのままジャイタンに直進!近距離攻撃組はお兄ちゃんの方に集まって!お兄ちゃんはジャイタンのヘイト取れる?」

「そろそろだ!」


『遠距離組は?』

『同じパターンで行くのか』

『土埃どうする』


「遠距離攻撃組は迂回してこっちに!タンク組はモグラ倒して大丈夫だからね!」


 各々が、急いで持ち場へと走る。俺はクールタイムが終わると同時に『ブレイブアタック』を炸裂させると、流石に直近でジャイアントタイラントワームに攻撃していたプレイヤーも俺しかいなかったため、無事にこちらへとヘイトが移った。

 俺の方へと顔を向け、遠距離攻撃組へとヘイトが移った時のように地中に潜るジャイアントタイラントワーム。一回目に障壁の人との連携で飛び込み攻撃を防いだ時は、ジャイアントタイラントワームのヘイトを取っても普通に地上を移動してこちらへとやってきていた。あの時の差と言えばジャイアントタイラントワームとの距離くらいなので、最初は遠距離攻撃に反応して起こす行動なのかと思っていたが、距離が離れている人がヘイトを取ると飛び込み攻撃をしながら移動してくるということなのだろう。

 なんて考察はともかく、今の俺はパッシブスキルをセットしていない。当然魔法獣を出している最中なので、切り替えもできない。障壁スキルも遠くに出すというのは無理だろうし、最初の突き上げ攻撃のように、素で耐えることを祈って受けるしかない。


「…………あ、そうだ、お祈りでエレゴレの後ろに隠れとくか」


 もしかしたら、エレゴレを肉壁にすることでダメージを抑えられるかもしれない。いや、むしろジャイアントタイラントワームに押しつぶされるよりエレゴレに押しつぶされる方が痛そうではあるが。

 とりあえず物は試しということで、エレゴレを召喚しその後ろに隠れる俺。そろそろ飛び込み攻撃が来るかというタイミングで身体に力を入れてみたが、ジャイアントタイラントワームが飛び込んでくる気配もなければ音もしない。


「お兄ちゃん下!」

「下?」


 ネイカに言われるがまま、足元に視線を移す。するとそこには何か土埃が巻き上がる演出が…………


「突き上げかよッ⁉」


 慌てて回避しようとするも、間に合わず。何がトリガーとなったのかは不明だが、ジャイアントタイラントワームはいつの間にか飛び込みではなく突き上げに路線を変更していたようで、俺は本日二度目のホームランを受けたのだった。

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