第97話 配信 第一属性・第二属性
「お兄ちゃん大丈夫ー?」
「ヤバいわ…………過去一痛かった」
『いい絵が撮れた』
『芸人路線』
『兄素材助かる』
助かるな。どこ需要だそれは。
なんて脳内でツッコむくらいの余裕はあったが、痛かったというのも本当の話だ。
もちろん受ける痛覚は軽減されたものだが、それでももう受けたくないと思うくらいには痛かったし、視界もグワングワンなるわで酷い体験だった。
しかし、ダメージ的には微々たるものだ。参加者のレベルに合わせてボスのステータスが変化するので、現状トップクラスを走っている俺たちにとってはかなり余裕なボスとなっている。よほど気でも抜かない限りはデスする危険はないし、なんならダメージを受けた傍から回復してくれる人がいるのでよほど気を抜いていても大丈夫かもしれない。
「それでボスは…………また潜ったのか」
「ちょっと叩くとすぐ潜るんだよねー。レベル低い人が突き上げくらっちゃうとデスしちゃうかもしれないし、どうしたものかー…………」
『明らかに遠距離攻撃に反応してるよな』
『ていうかフルアマミノタくんはフィールドボスなんでしょ?こいつの情報はないの?』
そのコメントは当然の疑問だったが、俺もネイカもそして他のリスナーたちも、誰一人としてその疑問に答えることはできないようだった。となると、これは新規のボスかまだ到達されていないエリアのフィールドボスかといったところだろう。
ネイカは悩ましい顔つきで周囲を見渡すと、改めて作戦を叫んだ。
「とりあえず第一形態はこのままゴリ押そう!ぱっと見今回の参加者が遠距離に偏ってるから、これが一番早いと思う!耐久に不安がある人は突き上げ回避優先で!フェイクもあるから気を付けてね!」
『いいね』
『たしかにさっきの集中砲火ヤバかったな』
俺は突き上げられていたのでわからなかったが、俺が突き上げられた後の遠距離攻撃組の攻撃は凄まじいものだったらしい。コメントの雰囲気的にその際にもスキルテイカーの光が起きたらしいが、俺からしたら何色の光だったのかもわからない話だった。というか、今までで一回も怪しげな奴すら見つけられたことがない。まず魔法獣を出している時はそちらになるべく意識を割かないといけないので、俺はスキルテイカーを探すのに向いていないのだ。
などと誰へ向けたのかもわからない言い訳をしながら、もぐらたたきのような第一形態戦が進んでいく。やがてジャイアントタイラントワームのHPが六割を下回った辺りで、ようやくその動きに変化が生まれた。
「…………!潜らない!」
「やっと第二形態か⁉」
『お』
『ちょっと早くね?』
単純作業のような攻略でいつの間にか雑談を始めていたネイカだったが、ボスの様子が変わると即座に反応し、コメント欄も一気に雰囲気が変わった。
「みんな注意!タンク組は近くの人のカバーに入って!」
それまで全員がバラバラに位置していたのを、ネイカは逆に利用する形の指示を出した。
そして動きを変えたジャイアントタイラントワームは、地中から全身を出して勢いよく一回転する。
「衝撃波!ジャンプで回避!」
『はやい』
『大丈夫?』
回転と共に勢いよく繰り出された衝撃波はかなり速く、咄嗟の反応ができる人は限られていた。
しかし、そんな中でもタンクの人が周囲の人を庇うスキルなどを駆使して、なんとか犠牲者なくやり過ごせたようだ。タンク役のHPの削れ具合を見ると、中には衝撃波で一撃死という人もいたかもしれない。
「みんなナイス!ちょっと気抜けてたかもしれないけど、ジャイタンくんちょっと厄介そうだから気を引き締めて行こう!」
「ジャイタン?」
「ん?ジャイアントタイラントワームでジャイタンじゃない?」
「…………」
『かわいい』
『ワームどこ行った』
『ネーミングのセンスよ』
まあ、伝われば問題はないのだが。
気を引き締めて行こうと言われても、ジャイタンの方が気になって引き締まらないというものだ。
「第一属性は地と虫かな?第二は斬に弱そう」
「なら氷か。俺は…………まあメルか。麻痺通るか?」
「んー…………どうだろ」
『効かなそう』
『エレゴレくん打だしな』
斬や打というのは、第二属性の話だ。
第一属性は、火・水・虫といったその個体を特徴している分類のことで、第二属性というのは斬や打、突など攻撃の種類を表したものだ。
例えばネイカが予想した通りジャイアントタイラントワームの第一属性が地・虫だとすれば、氷にとても弱い。それに加えて第二属性の弱点が個体ごとに設定されており、斬が弱点なら氷属性で斬属性の攻撃が最もダメージが通るということになる。となると、氷属性が付与された斬武器が一番有効なわけだが、『ブレイズラッシュ』のように派生スキルで氷属性の付いたスキルがある可能性もある。リリース当初は「属性攻撃スキルは魔法のみ」なんて言われていたが、今となってはわからない話となってしまった。しかし、少なくともここにいる人はそんな隠し玉を持ってはいないだろう。
あくまで予想だが敵の弱点を決めた俺たちは、それに則り真面目なジャイアントタイラントワーム攻略編成を行うのだった。
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