第51話 配信 VRハンター・サキ&かま
「あー、あー。……よし。今日の配信はコラボだよー」
『きたああああああ』
『助かる』
『いいね』
ネイカの掛け声と共に、リスナーたちのコメントが加速する。
それはここ数日で見慣れた光景であったが、なんだか今日はいつもに増してその加速量が多い気がした。
「今日はコラボってことでね、まあ今はお互いに自分のリスナーに向けて挨拶してるとこだよー。お相手はVRハンターのサキ&かまさん!多分皆も知ってるよね?」
『知ってる』
『サキちゃんまだ?』
『兄―。顔合わせどうだった?』
「ん?あー、まあ……すごかったかな」
『www』
『すごかった!?』
『いったい何が』
あの後二人とフーラの里を観光してわかったのは、サキが毒舌キャラというほどではないが、温厚な口調から時折鋭い言葉を投げつけてくる子だということだった。それに対しておしゃかまは、デフォルトで口は悪めだが悪い人ではないという感じだ。その相対的なギャップ感は独特の特徴であり、人気も頷けるものだった。
VRハンターのさき&かまというのは彼女たちの活動ネームで、その名の通りVRゲームを色々と遊びつくしているらしい。詳しい活動内容までは調べていないが、本当になんにでも手を出す雑食系で、リスナーたちは彼女たちのゲームのプレイを見に来ているというよりも、ゲームを肴にトークを聞きに来ているという感じだそうだ。
「それでまあ、今回はボス狩りのレベリングってことなんだけど、詳しい話は丸投げしてる。後でサキちゃんが説明することになってるよー」
『丸投げ』
『向こうからの誘いらしいね』
『はよ』
『どんなの?』
「んー、私もまだ何も聞かされてないからわからないんだよね」
『本当に丸投げで草』
『少しは知ってろ』
「メンドクサイじゃん。……あ、向こうの挨拶済んだらしいから始めるねー」
『おい』
『待て』
『話はこれからだ』
ネイカは逃げるようにそう言うと、リスナーたちのコメントも無視して二人の方へと駆け寄っていった。
「それでは改めて。VRハンターのサキです」
「同じくVRハンターのおしゃかまでーす」
「ネイカですー」
「はい。その兄です」
『兄w』
『ちゃんと名乗れ』
『www』
もはや一つの恒例行事となっている挨拶を終えて、サキが今回の規格の説明を始めた。
「はい。それでは今回はこの四人でテール海岸のボス狩りをやっていきたいと思います。私たちと視聴者さんは前の動画でご存じかと思いますが、ネイカさんたちの方にまだ説明をしていないのでまずはボスの説明から入らせていただきます」
サキの口調は観光の時にしていたものとは全く異なった雰囲気で、配信用というか、丁寧な説明口調のものだった。ネイカはそういう時でも……というかいつでも普段の口調でしゃべるのだが、サキはきちんとした時はきちんとした口調でしゃべるようにしているのだろう。どちらが正しいとかいう話ではないが、同じ配信者でもそういったところに相違点があるのは面白い話だなと思えた。
「今回挑むテール海岸のボスはですね、二体のボスモンスターがいる形式となっています。片方は前に出てきてスタン攻撃を多用してくるモンスターで、もう片方が後衛から大火力魔法を放ってくるモンスターですね」
「定番だね」
『いつもの』
『普通に強そう』
『四人で平気?』
そんな攻略を心配するコメントに対して、サキは自信ありげな顔をした。
「前回私とかまちゃんの二人で挑んだ時は手も足も出ませんでしたが、今回はお兄さんがいるので大丈夫です!」
「……俺?」
突然の名指しに戸惑うと、サキが笑顔を浮かべながら頷いてきた。
「はい。お兄さんの魔法獣の火力があれば、前回私たちが躓いた部分を突破できると踏んでるんです。詳しいことは実際に挑みながらの方が早いと思うので、早速挑みに行きましょうか!」
「準備はもうバッチリ整えてるよー」
サキの言葉を補足するようにおしゃかまがそう言うと、盛り上がるリスナーたちのコメントを背に俺たちはそのボスがいる場所へと向かっていくのだった。
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