SKILL FIGHT ONLINE

第15話 配信 レア魔法獣

「『魔法獣・メタルバード』……？」

　雪の村へとやってきてから改めてスキルを確認してみると、新たに解放されていたスキルはメタルバードの生成スキルだった。

　状況的にはシルバースライムから獲得したスキルがこれなのだろうが、正直わけがわからない。それに、なぜか取得に必要なスキルポイントもフォクシードよりも多かった。

「シルバースライムってメタル要素もバード要素もなかったよな……？」

「うん……もしかして割と適当なのかな？紐づいてる魔法獣スキルって」

「いや、でも狐の方の例があるからな……」

『解析なんだし関連あるだろ』

『特殊なやつなんじゃね？』

『こっち取ろう』

　取得に必要なスキルポイントは、フォクシーが５ポイントでメタルバードが１５だ。それと示し合わせたかのように、俺の手元には新たにモンスター発見数とマップ解放の実績解除で得たポイントを合わせて１５のスキルポイントがあった。

「まあギリギリ取れるっちゃ取れるが……俺のスキルも欲しいしな」

「でもせっかくならレアな方がよくない？」

「まあ、それはな……」

『メタルバード以外ありえん』

『レアだぞ』

『取れ』

「お前らな……」

　やたらと煽ってくるリスナーたち。

　それに乗せられてというわけでもないが、結局俺はメタルバードの魔法獣を取得することにした。まずは俺自身のスキルよりも先に魔法獣の頭数を増やしたいし、正直レアの方が気になるということもある。

「とりあえずこれで俺もまともな戦力にはなったかね」

「多分……？使ってみないとわかんないけど」

「そうだな……」

『普通に考えたら弱そうだけどね』

『これが強かったら強かったで問題ではある』

　やはり、リスナーたちも強さに関してはあまり期待していないようだ。

　だが、もしどんなに弱くても可能性自体は他のスキルよりも圧倒的に高い。スキルを発動させてからバトルに影響を及ぼせる時間だけで見たら、間違いなく最長なのだ。それこそが魔法獣の可能性であり、俺が信じるべき道である。

「とりあえず、これからはアールの街に戻りつつアックスコボルトの討伐かな？」

「了解。というか、今日はいつまでやるんだ？」

「え？」

「ん？」

『え』

『今日？』

『？』

　……？

　なんで俺が変なこと言ったみたいな雰囲気になってるんだ……？

「お兄ちゃん……配信は終わらないよ？」

「え」

『当たり前』

『配信タイトル見てないな？』

『知らされてないのかｗ』

「配信タイトル？」

　そう言われてネイカの配信を検索してみると、そこには『ＳＦＯレベルカンストまで止まらない配信』と書いてあった。

「……いやいやいやいや！」

「やるよ？」

「無理だろ！死ぬぞ！？」

　レベルカンストなんて何日……いや、下手したら何週間とかかかるレベルじゃないか。

　怪異を見るような目でネイカを見つめると、ネイカはあっけらかんと言い切った。

「やるよ？もちろんご飯と睡眠の休憩は挟むけど」

「いやいや、家事とかどうするんだよ」

「後輩呼んでるから大丈夫」

「だからわざわざ家に呼んだのか……というか、全然大丈夫じゃないし」

『いつも通り』

『後輩いないと生活できない女』

『ネイカたそ家事出来るの？』

「あ、ちょ、それ言っちゃダメ！」

「ネイカ……お前母さんに」

「お兄ちゃんもダメ！！！」

『ｗｗｗ』

『母さんに？？？』

『怒られてやんの』

『身内トーク助かる』

　たしかネイカが一人暮らしをする条件に家事をちゃんとやることみたいなのが含まれていたはずだが……まさか後輩にやらせていたとは。

　まあ、それを知ったところで俺は告げ口できるような立場でもないわけだが。というか、ネイカの家に招集されている時点でいずれは知っていたことだ。

（しかし、後輩か……）

　ネイカの後輩ということは、ゲーム配信界隈の後輩ということだろう。それに、おそらくは女性の方だ。俺も今までの人生ずっと実家暮らしで家事なんて覚えてこなかったので、その人に頼らざるを得なくなる。その人とうまく付き合っていけるかどうか……

「ほら、行くよお兄ちゃん！」

　話題を逸らすためか、ネイカが急かすように俺の腕を引っ張った。

　俺は降って湧いてきた新たな悩みの種に不安を抱きながらも、ネイカに言われるがまま再びアールの街を目指して歩き出すのだった。