第11話 配信 ギルド


「今のうちに決めておきたいんだよね、ギルドのこと」


 ネイカはそう話を切り出した。


「ギルド……チームみたいなもんだったか」


 ソロゲーばかりやってきた俺にはピンと来ない機能だが、ゲーム業界的には基本的なものだそうだ。

 SFOではギルドに入ることで使える機能の情報は一部だけ解禁されており、初イベントとして半月後にギルド単位で参加できるイベントが実装されるという情報と、ギルド倉庫機能が公開されている。

 イベントの方はまだ形式は不明だが、倉庫の方はギルドメンバーがフィールドやダンジョンのボスモンスターを撃破した際に追加報酬がギルド倉庫に与えられ、ギルドマスターかサブマスターがそれをメンバーに配ることができるという機能らしい。

 イベントの方にせよ倉庫の方にせよ、一人用ギルドだとしても所属しておけば得があるという機能になっている。運営としては、とりあえずプレイヤーにはギルドには所属しておいてほしいという思惑があるのだろう。


「俺はてっきりネイカが作るものだと思ってたが……」

「うーん、配信のこともあるしギルド運営の方にまで手が回らないと思うんだよねー」


『そうだな』

『やめとけ』

『ギルマスはしんどいぞー』


 たしかに人が集まるところに法はありとでも言うか、集団をまとめ上げるのは容易なことではないだろう。俺としても、ネイカに過剰な負担を押し付けたくはない。


「となると、どこかに所属する感じか?」

「それが理想かなあ。ネイカチームもある程度の小集団くらいにはなりたいから、それを受け入れてくれるところがあればいいけど……最悪は少人数ギルドとして活動することになるかも」


『小規模って配信的にどうなんだ』

『知らんやつの傘下にはなるな』

『ネイカちゃんが楽しければ何でもいいよ』


「んー、焦って探すものでもないし、とりあえず最初のイベントはみんなとやるのもありかな?みんなにもSFOやってみてほしいし」


『きたああああああ』

『VRセット買ってくる』

『スペシャルサンクス:俺ら』


「うわ、思い付きで言ったすごい盛り上がっちゃった」


 コメントの盛り上がりように若干引き気味のネイカ。

 そんなネイカのボヤキを聞いてもコメント欄は狂喜乱舞といった様子で、俺たちの初イベントは視聴者参加型のようなものになりそうだった。どんなイベントかは未だに不明だが。


「まあ初イベントはそれでいいとしても、身内ばっかでやってると交流が広まらないし野良プレイもしないとね」

「野良か……」


 この手の話題はいい話より悪い話の方が広まりやすいので仕方がないのだろうが、俺の中でMMOの野良というものにいいイメージはなかった。

 そもそも俺は一人の方が気楽だといって一人でゲームをやってるような質なのだ。見知らぬ人と協力とはなんとも敷居が高く感じるが……まあ妹のためだと割り切るしかないか。


「ちゃんと野良プレイも楽しいよ!たまに変な人もいるけど……」


 そんな俺の様子を見て、ネイカがフォローになっているようななっていないような言葉を掛けてくれた。


『ネイカちゃん可愛いから変なのいっぱい釣れそう』

『変な人(俺ら)』

『MMOはなあ』

『配信的にはOKなの?』


「そこは野良の人にお話ししてって感じかなあ。上位に行けば行くほど配信はちょっとって人も増えると思うし、もしかしたら他の配信者とって言うことが多くなるかも?」


『コラボいいね』

『むしろMMOの上位勢って固定メンツ組んでるかソロ専で野良はほぼいないイメージだけど』


「あー、たしかに上位勢には野良あんまりいないかもね」

「そうなのか」

「嬉しそうに言わないでよ」


 いや別にそんな嬉しそうなんてことは……あるけど。


「とりあえず、今後の方針に関してはそのくらいかな?メンバーに関してはいろんな人に声掛けてるとこだから期待してて!」


『ルナたそ呼ぼう』

『ほーりん!ほーりん!』

『きりたんぽさん配信見てるって言ってた』


「ふふ、メンバーに関してはまだ内緒だよ!」


 それぞれ思い思いの名前を上げるコメントを見ながら、ネイカが不敵に笑った。

 対する俺は───誰の名前もわからない。

 というか、ネイカは配信界隈では有名なのか?いや、配信業で食べているわけだし有名でも納得なのだが……コメントを見る限り人を集めて当然だという雰囲気を感じる。そんな視聴者の扱いを見て、俺の中のネイカのイメージが少し変わったのだった。

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