第10話 配信 クルド帝国
それから数時間後、俺たちは次の街を超えて更に次の街───クルド帝国の領地に入って初めての街───アールの街───へと辿り着いていた。
「しかし、まさかルーガの街まで行っても新種が出ないとは予想外だったな」
「回想はいいから!はやく討伐依頼!」
『ボーナスタイム終了』
『むしろ見慣れてきてた』
『もういいよ』
『え、服着るんですか?』
「当たり前でしょうが……」
ネイカがリスナーからの雑な扱いに疲れたように答えた。
ルーガの街というのはガズル村の次の街のことで、そこまでは俺たちがコレイスの森で見たことのあったモンスターしか出てこなかったのだ。
そこまではまだ良かったのだが、帝国に着くまでが本当に地獄だった。出てくるモンスターと戦う手段もないので逃げ回るハメになり、ずっと走りっぱなしだったといっても過言ではない。SFOにスタミナというステータスが実装されているのかは不明だが、少なくとも精神的には疲労しきっていた。
そんな俺たちの姿を見てリスナーが盛り上がり、周りのプレイヤーが若干引いていたのは言うまでもないだろう。
件の帝国はかなり広く、帝国内には拠点も多く点在していた。
そして俺たちと同じように真っ先に帝国を目指してアールの街まで来ていたプレイヤーも多く、パーティー募集の掲示板が活気づいていたことに少し驚いたのはつい先程のことだ。
「それで討伐隊は……こっちだね」
ネイカがマップを確認しながら討伐隊のところまで歩いて行く。
いきなり討伐隊で資金稼ぎをしようとしているプレイヤーはほとんどいないようで、街の中では珍しく閑散としている場所だった。
「すみませーん」
「おう、ここは討伐……って、あんたら何者だ……?」
『言われてるぞ』
『痴女と変態です』
『そりゃそうなる』
俺たち(インナー姿)を見て、討伐隊の人が困惑した声を上げた。
「私たち討伐依頼を受けに来て、装備の貸し出しもお願いしたいんですけど」
「お、おう、そうか……」
「何か不味いですか?」
「いや、問題はない。すぐに手配しよう」
『圧w』
『早く服着たいんやなって』
『NPCドン引きで草』
ネイカの急かす態度に、俺も思わず苦笑が漏れた。
そしてすぐさま、討伐隊の人に討伐依頼と装備を見繕ってもらう。
「そうだな……じゃあアックスコボルトを100体狩ってきて貰おうか」
「わかりました」
「武器はどうする?」
「私は片手剣とバックラーで」
「俺は……いや、俺もそれで」
どうせスキルでしかダメージは与えられないのだから、小回りが利いてガードもできる片手剣とバックラーのスタイルが一番いいだろう。
「OK!それじゃあ頑張ってくれよ!」
最初のドン引きはどこへやら、討伐隊の人は俺の肩をバシバシと叩きながら激励してくれたのだった。
討伐隊を後にして、俺たちはとあるカフェに来ていた。
カフェに来たのは別にネイカとお茶をするためではなく、一旦俺のスキルやらなんやらを確認するために落ち着ける場所を探していた結果だ。ちなみに、無一文でも水を注文することでカフェには滞在できるようだった。
「さて、まずは解析のスキルを取るか」
現在俺の手元には、モンスターを十種類以上見つけた実績の報酬を含めてスキルポイントが21ポイントある。これに対して、モンスター解析のスキル習得に必要なポイントは10ポイントだ。初期から習得するにはかなり割高なスキルとなっている。
「そういえば、解析のスキルにもレベルはあるの?」
「ちょっと待てよ……ちゃんとあるな。最大10レベ」
「じゃあ、どんなスキルでも例外なく10レベまであるっぽいね」
『スキレベ上げ大変そうだな』
『解析って1じゃダメなの?』
「あー、レベル上げないと解析できないモンスターがいるっぽいな」
「うーん……それは10欲しいね」
「だな。でも各魔法獣のスキルも10は欲しいし、俺自身が使うスキルも欲しいしな……」
「そっちはどう考えてるの?」
「使う魔法獣次第だと思うしな……状況に合わせるために何個も取ることになると思うが、パッシブも取っていかないといけないし、最初は汎用性の高そうなものを見繕う感じになるかもな」
「カツカツだねー。まあ私もそうなるんだろうけど」
実績はまだまだ豊富にあるだろうが、やはり理想に至るまでにはPKが必須になってくるのだろうか。
いや、スキルポイントの入手方法が基本的に実績とPKのみとはいえ、おそらくイベントの報酬などでも用意されているはずだろう。配信の雰囲気を見ても、下手にPKをして嫌われるのは避けたいところだ。
「とりあえずは誰でもいいから解析して一匹目の魔法獣が欲しいとこだな」
「依頼のアックスコボルトは解析できるの?」
「いや、わからん。その辺はシークレットにされてるな」
『大変だな』
『今はできなくても、スキレベ上げたらまたできるようになるかもってこと?』
『スライムいこう』
『運試しかー』
「ははは、まあそうだな……最悪はスライムで」
「スライムならいけるよね、多分」
安心と安全のスライムを保険にすることを決めた俺たちは、そこらでスキルの話は置いておいて、次の議題へと移ることにした。
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