発端であり原点であり根源

麺丸🐔

話を始める気がないほど長い前置きだな

 元から人嫌いだったわけじゃない。幼稚園児の頃は、初めて公園で見かけた子にも、自分から「いっしょにあそぼ!」と声を掛けられるような無敵の子どもだった。今は違う。真逆だ。自分が通りたい道に人がいるだけで迂回し、人に声をかけて尋ねることもできない。行列に並ぶなどもちろんできるわけがないし、改札前で待ち合わせだなんて、私にとってはもはや死を意味するようなものなのだ。



 人の何が嫌いなのか、と聞かれると少し悩むが、結局のところ答えはもうわかっているのだ。

 目だ。目が嫌いなのだ。目は口程に物を言うというが、まさにその通りだと思う。人の目は恐ろしいもので、冷笑、感動、怪訝、好意、無関心...すべて目つきだけで理解できる。


 ただ歩いているだけでもそれが気になってしょうがないのだ。きっと誰も私のことに注目しているわけがない。自分だってそうじゃないか。行き交う人々の全ての表情や服装を見ているわけじゃないだろうが。それでも、誰しもが自分を見て嘲笑している気がしてならない。



 「なんだこいつは。おい見てみろよ、奇妙な服装と汚い顔をしている。センスという言葉も知らないようだ。あんな見た目で人前に出て、死にたいとは思わないのかねぇ」

 「俺ならあんなのはまっぴらごめんだ。隣にいる友人らしき人や家族がかわいそうだなぁ。」

 「えっ何この人、なんかキモいし動きが変。顔面事故ってるし。うわなんか後ろから自転車来ただけでビビってんじゃん気持ち悪」



 ああ、なぜ人には目がついているのか......。


 同じような理屈で私は人の声も嫌いなのだ。

 泣いてる声を聴くと、自分が重大な罪を犯した人間のように思う。

 怒っている声を聴くと、自分の存在価値を否定されているように感じる。

 笑っている声を聴くと、自分が無様で惨めだと冷やかされているような気がする。

 

 人の目、人の声が飛び交う街の中を歩いていると、当たり前のように自分より優れた人間がうじゃうじゃといる。

 容姿が優れている。性格が優れている。友人関係に恵まれている。センスがある。才能がある。それを羨むのではなく、嫉妬し、憎んでいる私がいる。気持ち悪くて仕方がない。悲観的にしか物事を捉えられず、かといってそれを直したり、もっと良い人間になろうという努力すらしない怠惰な自分が存在しているのだ。


 最底辺な人間になってしまった。努力をせずに人から逃げることによって命を引き留めているような人間だよ。哀れでみっともない。馬鹿馬鹿しい話だ。この世界が産んだ失敗作なのだ......。



 私がここまでの人間になってしまった理由はきっと、小・中学生時代での出来事の中にある。嫌な思い出というのは、自分が自信を持った時に限ってフラッシュバックしてくるものだ。自分の頭の中でぼんやりと繰り返されている失態と呪いの記憶を、今一度、この機会に文字として外に出してみようと思う。これがこの物語の始まりだ。

 前置きにしては少し長くなりすぎた。推敲もしていないはちゃめちゃな文章だが、ひとまず言いたいことは書けたと思う。次の話からは、私の9年間の義務教育下で身についた憑き物の話をしよう。きっとつまらなくてありきたりな話だと思うが、自分のためにも私は書くよ。


それでは、おやすみなさい。



最終更新日2021年9月21日23時45分

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