第5話 鬼との儚い友情

「ちょ、ちょっと待ってください!いくらなんでも、1人では無理ですよ!」


スタスタと歩いて行く俺に、ルナは追いかけてくる。


「そんな事やってみないと分かんないだろ。」


「いくらなんでも無茶ですよ!」


「ルナは、何か魔法使える?」


「え?神聖魔法なら、少し…。」


「凄い!確か、使用できる人間はほとんどいない魔法だよね?これで、鬼に金棒だな。」


「危険です!貴方を危ない目に合わせるわけにはいきません!」


心配するルナを余所に、俺は歩き続ける。こっちの方向から煙が上がっている。攻められている国はきっとこの先だろう。国の入り口付近が見えてきた。


「おい、こっから先は通せんぞ。」


頭に角が生えている鬼のような魔族が立っている。金棒を持っている。


「ちょっと休憩したいと思いまして。」


「そうか…では、あの世で休んでもらおう。」


やすやすとは通してはもらえないか。


ルナが慌てて話し掛けてくる。


「あの魔族は鬼人族です!魔族の中でもトップ3に入る種族ですよ!」


「ふーん、強いってことか。楽しめそうだな。」


「楽しむ前に、あの世行きだ!!」


鬼は勢いよく金棒を振り回した!


「あぶねっ。」


攻撃をサッと躱すと、マイクロバイブレーションソードで頭部に反撃する!が、金棒で防がれ、剣が折れてしまった。


「これで終わりだな。」


鬼は勝利を確信したのか、ゆっくりとこちらに歩いてくる。


「それはどうかな。」


「何?」


ピシッと金棒がひび割れる!


「これでおあいこだ。」


俺はニヤッと笑った。鬼は気に食わない様子だ。


「まあいい。貴様なぞ、この拳で十分だ。」


「拳で語り合うかな。」


「おらあーーー!!」


鬼の拳と俺の拳が交差し、それぞれの顔面にヒットする!どちらも防御する気はない殴り合いが始まった。お互いに一歩も引かない戦いだ。この場合、全身に魔力壁を張って攻撃に耐えているため、純粋に先に魔力が尽きた方が負けになる。殴り合いは、まだまだ続く。


「なかなかやるではないか、人間!」


「お前も、さすが鬼人族なだけあるな!」


拳と拳の語り合いで絆が生まれつつあった。


「次の一撃で終わりだ!」


「望むところだ!」


お互いに大きく拳を振り被ったその時!


「神聖魔法シャインレイン!!」


え…!?


鬼の身体が光の柱に包まれる…!


「こんな終わり方は嫌だあーーーーー!!」


プシュンッと光の中へ消えていった。


「やりました!カズキさん!勝ちましたよ!」


ルナは大喜びしている。


「ルナ!」


「は、はい!」


「確かに、敵は弱っていてチャンスではあった…そこを狙うのは正しい。でも、違うんだよ!正しいことだけが全てではないんだよ!今この瞬間を燃えるものにしてあげたかっただけなんだ…。」


ルナはチョトンして理解できない様子だった。


俺は可愛いから許すことにした。


さらば、友よ。安らかに眠れ…

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ダブルソウルブレイカー @takezo827

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