第18話

 僕たちはあの後魔物狩りを諦め、避難所に戻ってきた。

 初めて会った日、明日香は制服を来ていてスカートだった。

 だからこそ、おしっこを漏らしてもパンツさえ替えれば服へのダメージはほぼなく、平然と行動することができた。

 しかし、今回の明日香の服装は違った。

 明日香が着ていたのは制服ではなく、私服。

 下に着ていたのはスカートではなく、ズボン。

 つまり、服へのダメージが尋常じゃなかった。

 パンツは替えられても、ズボンはおしっこまみれ。

 僕はパンツは持っているが、ズボン、スカート類は残念ながら持っていなかった。

 パンツ一丁の変態さんスタイルで行動するのは明日香が拒否反応を示した。

 まぁ、当然だろう。

 むしろ拒否反応を示さなければ僕は少し引く。

「ただいま、戻りました」

 僕は自衛隊員の人たちが待機している場所におもむき、見様見真似で敬礼する。

 ちょっとこういうのやってみたかった。

「おぉ、おかえり。どうだった?」

「えぇ、まぁまずですね」

「レベルはどれだけ上がった?」

「えっと、5までですね」

 恥ずかしそうにうつむいている明日香の代わりに僕が答えていく。

「5!?すごいな……我々よりもレベルが高いぞ」

「まぁ、魔物狩りに専念していますからね」

 人々の救助など他の仕事もある自衛隊とは違い、僕たちは魔物狩りに専念している。

 その差は大きいだろう。

「そうか。……我々も早急にレベルを上げる必要性がありそうだな」

「レベル上げの際は僕も手伝いますよ」

 できるだけ恩は売っておいたほうがいいだろう。

 僕の力も僕の知識も僕の立ち位置もすべてがすべてにおいてイレギュラーなのだから。

 なんかあったとき……いや、なんかあったとしても力技で解決することはできるんだけど。

 まぁ力技以外にも頼れるものがあると楽だよね。

「なんと!それはありがたい!」

「いえいえ、こんな世の中ですから。助け合っていかないと」

「本当にありがたい!」

「わ、私はもうそろそろいいかな?」

 ズボンにおしっこの染みを作った明日香が遠慮がちに口を開く。

「あぁ、うん。大丈夫ですよね?」

「あぁ。こちらとしてはありがたいが、報告の義務があるわけでもないからな。好きにしてくれ」

「ありがとうございます。えっと、これ」

 明日香が僕に大弓を渡そうとする。

「あぁ、別にいいよ。それは君に上げるよ」

「へ?」

「それは僕が持っている数ある武器の一つでしかないからね。一個上げたくらいじゃ痛くも痒くもないよ」

「そ、そう?」

「うん。だからあげる」

「ありがと」

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