第19話
「ふわぁ」
僕はあくびを一つ。
あれから一週間。
明日香の教育もいい感じに仕上がってきて、ゴブリンに囲まれてもおもらしもすることなく余裕で全員倒せるようになっていた。
その結果。
僕のやることがなくなり、暇になった。
割とガチで暇になった。
「ふぅー」
10匹のゴブリンを倒し終えた明日香がゆっくりと息を吐く。
「おつかれー」
「ふふふ、流石に余裕になってきたわ」
「まぁレベルも8になったらね。流石に余裕だよね」
一週間経って明日香のレベルは8に上がった。
レベルが高くなれば高くなるほどレベルも上がりにくくなっていく。
一週間でゴブリンだけと戦っていたと考えればなかなかいい感じだろう。
「それにしてもこの武器便利ね」
もはや常に持ち歩くようになった明日香にあげた大弓。
僕が持っている大弓の中でもトップクラスの力を持っている大弓。
大弓が勝手に所持者の魔力を吸い取り、矢へと変える能力を持っている。
そのおかげで持ち運びに邪魔な矢を持ち運ぶ必要も、矢がなくなることの心配をしなくて済むという最高に便利な大弓なのだ。
それだけじゃない。
ちゃんと火力も出る。
魔力を込めれば込めるほど矢の威力が上がり、僕レベルの魔力保持者が全力でそれを使えば容易く天を穿つだろう。
「ここまで強くなればここらへんの魔物を殲滅できるんじゃないかしら?」
「どうだろうね……」
そもそも僕がいれば大抵の魔物は敵成りえない。
明日香も異世界での初心者冒険者レベルの強さにはなったし、自衛隊員の人たちもレベル5以上にはなっているのでオークくらいなら戦えるだろう。
だが、嫌な予感は消えないのだ。
あのよくわからない化け物のことが気になって仕方がないのだ。
だが、いつまで及び腰のままではいかないだろう。
「そうだね。そろそろ本格的に魔物狩りに乗り出したほうがいいか」
「だよね!こんな避難所ぐらしなんてもうころごりだよ!」
「……たしかにね」
……僕避難所に暮らしてない。
普通に自分の家で快適に暮らしている……。
なんてこと言えない。
避難所ぐらしで苦労している、おしっこまみれになってしまった服の処理に心底苦労している明日香の前でそんなこと言えない!
キリっ!
「何しているの?」
一人でドヤ顔していた僕に明日香は冷たく突っ込む。
酷い。
……ん?突っ込む?……つっこむ……つっこむ。
辞めて!僕のケツの穴を掘らないで!
「さて、そろそろ避難所に戻りましょうか」
一人くねくねと動く僕を置いて明日香が帰ろうとする。
「ちょっと待って!?師匠を置いていくとかひどくない?」
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