イスカミューレン商会

第7話 イスカミューレン商会とジュエルイアン


 ジュエルイアン、リズディア、イルルミューラン、イスカミューレンと、この4人は20年以上の付き合いとなる。


 大ツ・バール帝国の第一皇女だった、ツ・レイオイ・リズディアは、帝都の大学を卒業後に、南の王国の大学に留学している。


 その留学に、スツ・メンサン・イルルミューランが、護衛を言い含められて、一緒に同行している。


 イルルミューランは、リズディアとは、イルルミューランの父である、スツ・メンヲン・イスカミューレンが、現皇帝である、ツ・リンクン・エイクオンと、幼馴染であった事もあり、皇城で皇帝の話し相手をしていた事もあり、幼い時から面識があった。


 リズディアは、エイクオンの最初の娘という事で、とても可愛がられていた事もあり、リズディアの我儘を通して、南の王国の大学への留学を許可してしまった。


 その際、皇帝は、リズディアと一緒に数名の留学生を、一緒に付けて南の王国へ送り出したのだが、その1人としてイルルミューランも送り出された。




 それは、ジュエルイアン・ヒメノス・トルハイマンが、南の王国の大学に入学した翌年に、イルルミューランとリズディアが入学してきた。


 リズディアは、帝国の大学卒業後の留学であったが、イルルミューランは帝国の大学に入学しようとしていたところ、その入学を取りやめて、国費留学生として南の王国の大学に入学している。


 それには、父であるイスカミューレンから、リズディアの護衛も兼ねて、南の王国の大学へ行くように皇帝からの依頼を受けている。


 イルルミューランは、学力的に、ソコソコ上位の成績ではあった事と、幼い頃から、イスカミューレンに連れられて、皇城に着ていた事もあり、リズディアとも、幼い時から面識もあったことで、リズディアの護衛も兼ねて一緒に留学させられた。


 その時の縁でジュエルイアンと、リズディア、イルルミューランは面識があった。


 一学年上の主席だったジュエルイアンと、その一つ下の学年に入ったリズディアが、学園内で出会い、何方も同じ学部だった事で交流が生まれた。




 ジュエルイアンとリズディアの出会いは、イルルミューランの仲介によって行われた。


 学園内で、6年間の親交を深めた3人は、ジュエルイアンが卒業後の進路について検討していた時に、ジュエルイアンは、親の商会に直ぐに入るのではなく、他で見聞を深めたいと思っていた。


 ジュエルイアンに、イルルミューランが、帝国の自分の家のイスカミューレン商会を勧めてくれたのだ。


「南の王国以外で働くにしても、先輩には、つてもコネも無いのでは、結果として家に頼る事になります。 だったら、私の父の商会で働いてみてはどうでしょうか。」


 そうイルルミューランが、帝国の父親を紹介した事で、卒業後、暫く帝国のイスカミューレン商会で働いている。


 その際に、ジュエルイアンの仕事っぷりが、イスカミューレンの目に止まり、若い時から多くの仕事をこなしている。


 翌年にはイルルミューランも、皇女殿下と一緒に卒業して帝都に戻ってきて、イルルミューランとジュエルイアンの2人が商会をさらに大きくした。




 その後、リズディアの行き遅れ問題で、イルルミューランに嫁ぐ事になり、3人が中心となりさらに手広く事業を広げていった。


 その際に、ジュエルイアンも大きく貢献しているので、このイスカミューレンの商会ではジュエルイアンは、3人の客人として厚遇されている。




 イスカミューレンとしては、ジュエルイアンを、このまま自分の商会で息子夫婦である、イルルミューランとリズディアと一緒に働かせたいと考えていたのだが、ジュエルイアンは王国に戻る事になった。


 その後は帝国にもジュエルイアンの商会を通じて、南の王国との相互取引が進み、どちらの商会も互いに勢力を伸ばした。




 リズディアは現皇帝の皇女であったが、現在は、皇位継承権を返上して、イルルミューランに嫁いでいる。


 その件に関しては、リズディアの婚期が遅れた事と、イスカミューレンが現国王のツ・リンクン・エイクオンと学生時代から交流があり、その関係もあって婚姻が成り立っていた。


 なお、イスカミューレンは無爵位の下級貴族ではあるが、爵位の授与の話は何度かあった。


 しかし、その都度イスカミューレンが、爵位の授与を辞退している。




 イスカミューレンは、小さい頃、病弱で、学校に入るのが遅れた事で、3歳年下の現皇帝のエイクオンと同学年になったのだ。


 イスカミューレンが、10歳になった頃には、体力もついて、病弱だった幼少期とは打って変わって元気な少年になっていた。


 また、周りより3歳年上という事で、身長が周りより大きくなった事で、幼少期の皇帝エイクオンの目に入り、その身長差ゆえに、教室内での自分の騎士のように扱われた。


 皇室としても皇太子の御学友にそういった人間がいる事で、万が一の際の時間稼ぎにもなると思い都合良く扱われたのだ。


 その後も、学生時代は一緒に過ごすことが多かったことで、皇帝とは友人関係を築いている。




 イスカミューレンは、貴族としての暮らしより、当時はそれ程大きくは無かった父親の事業に興味があり、経済面を豊かにした方が帝国の為になると、皇室に関係を持つより帝国のための経済面に力を注ぎたいという理由で、爵位の授与は辞退していた。


 実際には、皇室内部の貴族的な派閥争いや、駆引等に関わるのは、御免だと考えていたのだが、そういった事は、一切、表に出してない。


 なお、貴族派閥に属して無いのは、皇帝のエイクオンの友人として、縁婚関係を持たなかったからであるが、エイクオンの第一皇女であるリズディアによって問題が起こった。




 リズディアは、皇帝の最初の女の子だったこともあって、皇帝であるエイクオンが溺愛した。


 リズディアとしては、小さい頃は良かったのだが、大きくなり始めた頃に父の愛し方を鬱陶しく思い始めて、何かあれば、勉強に逃れた。


 その甲斐あって、リズディアは成績上位であった、しかし、初めての縁談を断ってからは、絶えず学年主席を取る秀才となり、更に皇帝から可愛がられる事になる。


 嫁ぎ先の候補も多かったのだが、縁談の都度、学業の方が楽しいのだと断っていたのだ。


「今は帝国の為、学業を疎かにできません。 帝国は軍事力は強くともそれを支えるのは軍を扱う人によるもの。 私はその底上げを行うために学業に努めます」


 そう言って、縁談を断っていたのだ。


 帝国内の大学を卒業後、有力貴族との縁談が合ったのだが、その話が気に入らなかった為、王国の大学に留学すると言い出し、皇帝を困らせたのだ。


 その時に皇帝に留学を決定させたのが、イスカミューレンが助言した事によると、密かにいわれている。




 結婚相手の素行については、その貴族の家が、色々と揉み消して表に出てない事を非公式に告げて、愛する第一皇女を、そのような男に嫁がせるのを躊躇った皇帝が、リズディアの留学を容認した。


 その際に、イスカミューレンの息子であるイルルミューランを護衛も兼ねて、数人の留学生の中に入れて、リズディアと一緒に留学させている。

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