第28話 当て付け

本家バイトは社員登用を目指すハマちゃん、時間を持て余したセレブ谷藤がレギュラーで入り、どちらもいない日や土日祝日を私が入る仕組みとなっていた。不定期バイトゆえ、会社に着くまでその日のメンツを私は知らない。

今週は土日のフル勤務だった。土曜日は「マネージャー」と呼ばれる管理職の井頭(イノガシラ)、高田の社員2名とハマちゃんと私というメンバーだった。久しぶりに皆の顔を見て、テンションが上がる私。特に滅多に会わない井頭は私のことを「履歴詐称」と呼び(提出した履歴書添付の写真と実物があまりにも違い過ぎたことに由来)、私のことをいじり倒すのが通例だった。今更だが、私は天性のいじられキャラで、このバイト先の社員たちとすこぶる相性が良く、それが長く続けられた一因でないかと思う。

土曜日はそのまま何事もなく過ぎ、迎えた日曜日に事件が起きてしまう。




日曜日、昼前にバイト先に着くと、メンツを見て言葉を失った。社員は岡、熊澤、斉藤の3名で、さらに谷藤がいたのである。斉藤に会えた喜びも束の間、今までほとんど機会がなかったにも関わらず、よりにもよってこのタイミングで谷藤と一緒だったことに驚き、さらに私と谷藤が一緒の部屋で寝たことを知っている岡がどう立ち回るのか、気が気でなかった。あの日以来、岡にも熊澤にも谷藤にも会っていなかったのである。


「おー久しぶり!元気だった?」

こちらに気付いた岡に挨拶する。すると、隣にいた熊澤が、

「おはよう、酔っぱっぴー。派手にやったんだって?」

と私の肩を小突く。おはようございます、ご存知なんですね、派手にオトナの階段を転げ落ちました、と力なく笑う私を、接客中の斉藤がチラリと見た。谷藤も同じく接客中だったので、このやり取りを聞かれることがなく一安心した。

休憩時間になり、熊澤と谷藤が休憩に入った。斉藤は、バックヤードで何かの作業をしているようで、岡と私で忙しなく業務をこなす。2人が休憩から戻ると斉藤が休憩に入ったが、久しぶりに会えたにも関わらず、業務上の会話を僅かに交わしたのみで、休憩に行くのに私の前を通った時も目を合わせてもらえなかった。

避けられていることは明白だった。


一方、もう1つの懸念事項である谷藤だが、こちらは恐ろしいくらいに上機嫌だった。手が空くとすぐに私のそばにやって来て、会いたかった、会えて嬉しい、最近何してたの、相変わらずかわいい、また家に来て、と私の肩をさすりながらそういったことを話しては去って行った。私はというと、愛想笑いを浮かべて乾いた回答をすることに終始した。

私はこの日小休憩しかなく、岡が昼休憩に入ると、熊澤、斉藤、谷藤と私という嫌な予感しかしないメンツとなった。谷藤は、相変わらず隙あらば私にベタベタしていた。今思えば、これは斉藤(聖子ちゃん)に対する当て付けだったのかもしれない。

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